1943年、イタリア軍の捕虜となった五人の准将は、伯爵未亡人フランチェスカ（シルヴァ・コシナ）の豪邸でいたれりつくせりの生活にどっぷり！そうとも知らぬ将軍は、脱走の常習犯である二等兵ハリー（ポール・ニューマン）に将校に格上げするから彼等の脱走に手を貸すようにと命じるのだが、五人と合流したハリーはフランチェスカに一目惚れ！脱走なんか二の次に・・・。
ニューマンの軽さが存分に楽しめる戦争コメディですが、シルヴァ・コシナの「大人の魅力」にもまいった一編。イタリアが降伏した途端、ナチがやって来てのんびりムードもここまで。ハリーは二等兵だと白状して他に移されるが、すかさず脱走！こっそり六人（イタリア軍の将校が一転捕虜に）の元に戻って来てからの活躍は痛快そのもの！なにしろ、巡回が来ても常に一人は自由に歩き回れるんですから。ばかばかしいけど、実はすごい作戦なのでした。
無目的に生きる平凡な高校生コユキ（佐藤健）が、ひょんなことからニューヨーク帰りのギタリスト、竜介（水嶋ヒロ）と知り合い、ギターを手にすることに。それからロックにのめり込み始めたコユキが、竜介や他のメンバーたちとの奇跡の出会いによって、日本最高のロックイベントへの出場を目指すのだが・・・。
コユキと竜介の妹との恋模様、バンド内のいざこざ、対抗するバンドの嫌がらせ等がこれでもかと盛り込まれた青春サクセスストーリーですが、竜介がニューヨークで盗んだギターがトラブルを生むという展開はちょっとやり過ぎで、ただでもリアリティ欠如なハナシを尚更ひどくした気がします。盗んだギターの件（くだり）は、ある種のブルース神話へのオマージュなんでしょうが、そこまで渋いハナシでもないので欲張り過ぎでしょう。たいした内容もないのに放映時間だけは長かったですからね。全ての聴衆を魅了するとされるコユキの歌声が実際には聴こえないというのはいい作戦！聴こえたら、リアリティどころか夢も希望も失いますからね、きっと！
援助交際グループのリーダー的存在の女子高生、理央（佐々木希）は、ある日、どこか寂しげな陰のある大学講師の光輝（谷原章介）に出会い、恋に落ちるのだが・・・。
モデル出身でCMやヴァラエティでも大活躍の佐々木希のための映画でした。理央にはレイプされ、子供を堕ろしたという過去があり、そのために信じられるのはお金だけ！そんな理央が初めて人を好きになったことで、新しい生き方を見つけ出すという、いかにもケータイ小説らしい何でもありのハナシなんですが、上っ面だけのダークさしか描かれていないので、まったく伝わってくるものなし！ 光輝が不治の病というのもパターン通りでガックリ！と、ここまでボロクソに言っておいてなんなんですが、決して佐々木希さんが悪いわけではないのです。かなりキュートです。ひどいと言っても、同じケータイ小説の映画化だったガッキーの「恋空」よりは、内容的にもいくらかマシだしね。
一日だけ大統領の替え玉を演じることになったそっくりさんのデーブ（ケビン・クライン）。ところが、秘書との情事中に大統領が脳卒中で再起不能に。密かに大統領の地位を狙う側近アレクサンダー（フランク・ランジェラ）は、デーブに身代わりを続けさせて、権力を手にしようと企むのだが・・・。
誠実でユーモラスなデーブが大統領に成りきり、善行をなしていくというヒューマンコメデイ。大統領とは冷えきった関係だったファーストレディのエレン（シガニー・ウィーバー）との淡い恋、堅物SPデュエイン（ヴィング・レイムズ）との友情などを混じえた、掛け値なしの明るく楽しい作品です。アレクサンダーに失脚させられる副大統領にベン・キングズレー、デーブの友人にチャールズ・グローディンと脇もバッチリ。
なお、ここまで完璧な爽やかさは持たないにしても、似たようなテイストの作品に大好きな「天国から来たチャンピオン」あり！ ここにも、チャールズ・グローディン。
アリゾナが舞台。ベトナム海兵隊上がりの白バイ警官ジョン（ロバート・ブレイク）の夢は、殺人課に転身し、背広で車を乗りまわすこと。たまたまフランクという老人の自殺現場に居合わせたジョンは、フランクの死に疑問を持つのだが、やはり殺人と見た担当の殺人課刑事の下で動くことに。ジョンにとっては千載一遇のチャンスがやってきたはずだったが・・・。
生真面目で職務に忠実なジョンの夢が粉々に砕け散っていく様を、冷酷ともいえるタッチで描いたアメリカン・ニュー・シネマ作品です。誠実な一警官の目から見たアメリカのダークサイド、いや、それ以上に人間そのものを描く意欲に溢れた立派な作品です。権力を笠にきた差別主義者の殺人課刑事、欲望に負け、犯罪現場から大金を盗み取ってしまう同僚警官、悪に手を染めているがために善良な警官を恐れ、発砲してしまうヒッピー、自分から離れて行ってしまった友人を手にかけてしまう孤独な老人、彼等の姿を俯瞰でありながらも、暖かい眼差しを忘れることなく描いたのは、ブラスロック・バンド「シカゴ」のプロデューサーでもあるジェイムズ・ウィリアム・ガルシオ。知る人ぞ知る「マデュラ」のライブシーンもあり！
東京の地下施設で活動を続けていたアンブレラ社に潜入し、破壊に追い込んだアリス（ミラ・ジョヴォヴィッチ）は東京を後にして、仲間だったクレアと再会！ 希望の地アルカディアを目指す途中、無数のアンデッド達に追われ、刑務所内に逃げ込んだ生存者たちと合流！共にアルカディアを目指すのだが・・・。
アンブレラ社のリーダー、アルバートとの対決は、完全にCGバカのパソコンゲーム！なので、やっぱりダメかあー、と思ったものの、クレアやクレアの兄クリスと合流して共に行動しだしてからは、そのサバイバルぶりが小気味よくて楽しくなりました。ラストは再び、アルバートとの対決となり、ゲーム感覚に戻ってしまいますが、そこは、致し方なし！と寛大なココロ。がしかし、許せないのは、刑務所内の地下の武器倉庫に向かうシーン！途中、クレアが怪物に襲われ、水中に引き込まれて行方不明になったのに、一緒だったアリスもクリスもまったく悲しむ素振りも無し！あれーと思って巻き戻して再確認したけど、やはりクレアのことはなにもなかったよう！驚くべきは、怪物を倒した風でもないクレアが、次のシーンでは何食わぬ顔して皆と再び合流してたってこと！なんか観客をバカにしてるみたいでガックリ！脚本がどうこう以前に監督の良心を疑いましたね！こんなことしてるから、アクション映画の地位向上がなされないのです。
多重人格を否定する精神分析医カーラ（ジュリアン・ムーア）は、その病気を理由に罪から逃れようとする犯罪者達のウソをことごとく見破ってきた。そんなカーラが、同じ精神分析医である父からデビード（ジョナサン・リス・マイヤー）という患者を紹介され、診察を始めるのだが・・・。
なにかと多重人格のせいにする安っぽいサスペンスより、多重人格のウソを理論的に打破する！という方がずっと深みがありそうなので興味深々！ カーラがデビードに現れる人格を調査し、分析するうちに深みにはまっていく序盤はそれにたがわぬ面白さでしたが、次第にオカルトホラー色が強くなってきて、個人的には尻つぼみ状態！ 夫を事故で亡くしているカーラの一人娘（父親を失くしているせいで、神を信じていない）までもがデビードの人格に現れだしてからは、もう何が何だか分かりませんでした。
冬になると30日間太陽が昇ることのない「極夜」となるアラスカの小さな町を舞台にしたヴァンパイアもの。町の保安官エバン（ジョシュ・ハートネット）と別れた妻ステラ、エバンの弟など、数人の住人たちの30日間のサバイバルを描いてます。
この手の作品の値打は迫りくるバンパイアの恐怖がどんぐらいか？で決まるんでしょうか？その点ではヤツラの怖さはかなりなもの！ただし、生き残った住人たちが、やたらバラバラに別れて行動するのには納得いきませんね。これって、安っぽいホラーものの常道なんでしょうが、脚本に対しては、案外、生真面目なところのあるワタシとしては、ハラハラするより呆れてしまうんです。次から次と隠れ家にふさわしい場所へ移動し続けるのも見せ場のひとつなんですが、やはりバラバラに移動するんでかなりの興醒めでした。そこらのユルさが許せないようでは、ホラーファン失格なんでしょうけどね。
伝説のスター、テス（シェール）が経営するショークラブ「バーレスク」は、かつての人気を失い経営難で身売りを迫られていた。そんな時、スターを夢見てアイオワからやってきたアリ（クリスティーナ・アギレラ）が、使ってほしいとテスに頼み込むのだが、あっさり断られてしまう。それでも諦めずウエイトレスとして働き出したアリにようやくチャンスがやってくるのだった。
そんなアリのショーダンサーとしての成功と「バーレスク」がアリの機転で危機を脱するまでを描いたミュージカルです。恋愛あり、主役を奪われたダンサーの嫌がらせあり、引き抜き合戦ありとミュージカル王道を裏切ることのない内容でしたが、個人的には「どうだ、ワタシって声出るでしょう！うまいでしょう！」と声を張るアギレラにはまったく魅力を感じませんでしたね。めったやたらの声出る自慢は勘弁してほしいです。そこらが「ミュージカルの素敵なところよ！」と思っている純粋なファンには申し訳ないですけどね。
日の暮れたスキー場。大学生のスケートボーダー、ジョーとダンとダンの恋人パーカーは、頼み込んで終了したリフトに乗り込んだのだが、代わりに来た係員の手違いから頂上に着く前にリフトがストップ！ゲレンデの照明も消えてしまうのだった。-20度の極寒、地上15メートルのリフトに取り残された3人の運命は・・・。
助けを呼びに行こうと飛び降りたダンは着地に失敗し複雑骨折！血の匂いを嗅ぎつけた狼がやって来るという展開は怖かったです。特撮と解っていても、狼に襲われ食いちぎられる様や、凍傷にやられる手など思わず目を伏せる場面もあり！ですから、そこらが苦手な人は要注意！自分ならどうするか？想像するだけでゾッとしますが、リフトのラインをレンジャー部隊のようにつたわって降りればよかったんじゃあ？とかいろいろ考えを浮かべましたから、面白かったと言うべきでしょう。一言でいえば「オープン・ウォーター」の雪山版ですね。
ペンシルヴァニア州。運転士のブレーキ操作ミスにより、無人の貨物列車が暴走！危険物を積んだこの貨物列車はスピードを増したまま、40キロ以上では曲がりきれないカーブへ！途中すれ違った、ベテラン機関士フランク（デンゼル・ワシントン）と新米車掌ウィル（クリス・パイン）が乗る列車が連結するために追いかけるのだが・・・。
その日初めて顔を合わせたフランクとウィルは、それぞれに訳あり！なんですが、そこらはサラッと組み込み、ひたすら暴走列車の恐怖を描いた直球勝負のアクション作。車で追いつけんなら、もっとなんとかなったじゃあ？みたいな疑問も後の祭り！ともかくスピード感があり、見入ってしまいました。へんにヒューマンドラマっぽくすることなく、95分にまとめ上げたのも良かったですねー。久々の痛快作です。
追い詰めたはずの爆弾魔ライオン（ジョー・パントリアーノ）の罠にはまり、妻か仲間達かの選択を迫られた刑事トム（ショーン・パトリック・フラナリー）は、数十人の仲間の命を救うため、自ら妻に銃弾を撃ち込んでしまう。8年後、退職し怠惰な毎日を送るトムの元にFBI捜査官イザベルがやってきて、再び現れたライオンを逮捕するための協力を求めるのだった。
狡猾なライオンと冷静な分析で追うトムの対決をテンポ良く描いたアクション作。変装名人のライオンが従業員になりすまし、爆弾を仕掛けるあたりは案外丁寧だし、目的のために手段を選ばないライオンが、今度はトムの同僚にトムと同じ究極の選択を迫まるのも見せ場！てっきり低予算B級アクションと思っていたので、あちこち凝った展開には、正直、ビックリ！ ライオンの人間性までは迫ってないので、金目当てのライアンがなぜにそこまでトムにねちっこいのかが伝わらないし、脚本的にも穴だらけですが、それでもここまで頑張ってれば上々！ただし、この期に及んでのトムとイザベルのラブシーンは勘弁してほしかったなあ、一気に安っぽくなりました。
1966年民放ラジオがなかった頃のイギリス。高校を退学になったカールは、更生のため母の旧友クエンティンの船に預けられるのだが、その船というのは海賊ラジオ局だった！過激なDJ達が流すロックはイギリスの若者に大人気だったが、おカタい政府から弾圧が・・・。
カールの青春ものとしては弱過ぎるし、反体制ものとしてはパンチ力不足なので、60年代ロックファンとラブ＆ピースな人達のための一編でしょう。ぎりぎり、そこらに絡んでいるせいか知らない曲がなかったのでオーケーでしたが、はっきりいって内容的には薄いので、ミュージカルでも見るつもりでないとツライかも？長いしねー！ DJの一人伯爵役でフィリップ・シーモア・ホフマン。
死刑になることを望み、無差別殺人を犯した男、坂口秋生（豊川悦司）に自分を見た孤独なOL、遠藤京子（小池栄子）が、坂口に接近！ 差し入れ、面会をくり返すうちに坂口も京子にだけは心を開き、結婚までも承諾するのだが・・・。
衝撃的な事件が起こるたびに、頭の良い人たちが犯人の抱える闇の部分を解き明かそうとするんですが、結局は人それぞれ！「孤独」ってのも、やはり、それぞれに違った感覚なんだってことを強烈インパクトで伝える作品でした。がしかし、出演者はこの二人と、京子に同情以上の感情を示す坂口の弁護士（仲村トオル）と坂口の兄ぐらいなので、ストーリー的にはまったく膨らみが無く、興味は最初から「オチ」がどうなるかだけ！なので好きな作品とは言えません。
大学卒業を前にしたさよ（伽奈）は、4年前、自分と祖母を残しタイ、チェンマイのゲストハウスで働きだした母、京子（小林聡美）を訪ねることに。変わり者の市尾（加瀬亮）や菊子（もたいまさこ）と共に、行方不明の母親を捜すビーという少年の面倒を見ている母に、どう接していいのか分からないさよだったが・・・。
小林聡美と、もたいまさこですから、ドラマティックな展開はいっさい無し！とことんまったりムードの中、親と子の微妙な距離感がちょっとだけ縮まっていく様子が描かれてます。「かもめ食堂」と比べると全てに落ちるんですが、総じて、女流監督（売れっ子脚本家らしい大森美香）ものは、どうだ！オレ様すごいだろう的な暑苦しい「押し出し」が無いのが良いですね。
京子は「したい時にしたいことをするのが一番大事なことで、それは大人も子供もない」と言いきってますが、ちょっと力強過ぎて、この役は小林聡美さんで良かったのかなあ？って思いましたけどね。