友人である殺人課警部マギーの依頼で、組織に殺し屋を差し向けられ、身を隠しているマフィアの会計士ヴァカロをガードすることになった私立探偵マーロウ（パワーズ・ブース）の活躍を描いたハードボイルドもの。
イギリスで製作されたTVシリーズの一編です。以前見たときは、マーロウ＝ロバート・ミッチャムのイメージに囚われていたせいか、いまいちな感じに思われたんですが、今見直してみると、パワーズ・ブース版もなかなかのもの！ 特にこの「殺しの鉛筆」は、マーロウに協力する警官の娘アニーが度胸満点に、相棒的役割を果たすのが魅力！ あまりにも定番である「悪女」が絡むパターンでなかったのもなにより！ 監督にピーター・ハントを起用したことからもチカラの入りようが分かるというもんです。鉛筆でリストの中の名前に線を引く＝「抹殺する」ってことからきたタイトルのようです。
刑務所の保釈管理官ジャック（ロバート・デ・ニーロ）は真面目に勤めあげて定年間近。最後に担当することになったストーン（エドワード・ノートン）にも厳格に対処していたのだが、ストーンは妻ルセッタ（ミラ・ジョヴォヴィッチ）にジャックを誘惑させ、仮釈放のために手心を加えてもらおうと企むのだった。
自分の中の宗教心を信じきれてないジャックが、魔性の女ルセッタによって人生を狂わせていく様を描いた作品なんですが、サスペンスと言うほどのスリルはないし、ドラマとしては、テーマが散漫！悟りのようなものに近づく、ストーンってのも、なんかピンとこないし、狂信的な妻マデリンとジャックの対比も半端な感じ！なので、どうにもツライ一編でした。
死期が近い祖父ヘンリー（マイケル・ケイン）と暮らす、銀行員のジェイソンは、妻とは別居中で一人息子ザックを引き取っていた。そんなある日、母を事故死させて以来、行方不明になっていた父ターナー（クリストファー・ウォーケン）が現れる。ヘンリーの計画に従い四世代で旅に出ようとするのだが、ヘンリーが急死！ヘンリーの遺書に従い、ターナー、ジェイソン、ザックが弔いの旅に出るのだが・・・。
懐かしのロック、ポップスが心地よい、いかにもアメリカンなロードムービーを思わせるんですが、ターナーの忌まわしい過去が暴露されていくにつれ、重たく暗く、その上、病気ネタという「悲しみの押し売り」になってしまいました。ウォーケンの放つ、底抜けではないユーモア感覚を生かすためにも、せめて、病気ネタだけでも避けてくれればよかったのに！具体的な「死」を持ちだして生きる意味を問いただそうなんて、あまりに稚拙な手法です。だってそこには創造性が入り込む余地がないんですから！良い場面もある作品なので、なおさら残念！
1954年、ニューイングランドのとある屋敷が舞台。経済的援助をするという手紙におびき寄せられた、すねに傷持つ六人（レスリー・アン・ウォーレン、クリストファー・ロイド、マデリーン・カーン、マーティン・マル他）の男女に、屋敷で働く、執事、メイド、コック、それに六人を招待したミスターボディが巻き込まれる連続密室殺人を描いたコメディ。
六人の弱みを握り、ゆすりを企むミスターボディが何者かに殺され、続いてコックも・・・。いちおう犯人探しがテーマなんですが、誰が犯人なのかを真剣に謎解きする気は起きないノリなんで、その点ではいまいち楽しめず！それでは何が楽しいのかな？うーん、このドタバタ感かなあ？「名探偵登場」ほどの粋さ、バカバカしさも無いしなあ？んなわけで、個人的にはピンとくるもの無しでした。結末が三つ用意されていて、その中からランダムに、もしくは三つとも見ることができるというシステムもね？有難いですかね？
ところで、こないだ見たばかりの邦画「インシテミル」は、まるっきりこれのパクりだったんですね！ますます「インシテミル」は低評価！
ハーバード大学に通う19才の学生マーク・ザッカーバーグが親友のはずだったエデゥアルドと共に、エリート階級社会ゆえにタブー化されていた大学内の出来事をオープンにするサイト「フェイスブック」を立ち上げ、巨大化していく様を描いた作品。
悪い人じゃないのに、まわりの全ての人から悪く思われてしまう、天才おたく青年ザッカーバーグの成功を描いた作品ですが、そんな人間ゆえに失うものも多かったということを伝えてくれてます。1と0のみで構築されている世界には、人間の感情など入り込むことは不可能！そこらを、ネット社会についていけない者が、自己を正当化するために批判するというような安直な展開で無かったのには好感！なんですが、それ以上のものも感じとれなかったので、デビッド・フィンチャーに対する頭打ち感は残りました。
8才で両親を失った孫のマイケルを引き取り、育て上げた頑固な老人ロッキー（ピーター・フォーク）が、大人となり、パートナー（ベス＝ジュリアン・ムーア）を見つけ、父親となったマイケル（D・B・スィニー）と共に暮らし、大往生を遂げるまでを描いたホームドラマ。
大好きなピーター・フォークの老いざまなど見たくはないので躊躇してましたが、友人がさりげなく、ふわっとした感じでプッシュしてくれたので、ね。まずは、苦手なお涙頂戴ビョーキものでなかったのはなにより！てっきりロッキーとマイケルの涙の別れがメインと思ったんですがね―、意外な展開（ネタばれなので触れませんが、個人的には好きな展開じゃないです）もあって、けっこう引き込まれました。老いたりとはいえ、流石！ピーター・イエーツ監督！テーマのわりには重苦しさやもたつき感がなく、テンポ良く捌いてます。108才まで生きた、頑固だけど心優しいポーランド人（ここもポイント）ロッキー！の大往生なら、明るく見送れるかも知れませんね？
それにしてもジュリアン・ムーアさんは落差が激しいです。物凄く綺麗な時と、そうでもない時との・・・。ここでは、役柄的に派手さはないんだけどかなり綺麗！なんか儲けた気分！
1882年アメリカ西部。ボス（ロバート・デュヴォル）率いるチャーリー（監督も兼ねたケビン・コスナー）とモーズとバトンの四人のカウボーイは、自分の牧場を持たず、草原を移動しながら牛を育てる「フリー・グレイザー」。ある日、通りがかりの街へ出向いたモーズが、街を牛耳る悪徳牧場主バクスターの子分達に襲われ、大けがを負う！バクスターが牛を狙っていると知ったボスとチャーリーは先手を打とうとするのだが・・・。
無慈悲に人を殺してきた過去に苛まれるチャーリーが、ボスとの友情、医師の妹スー（アネット・ベニング）との出会いを通して、新たな人生を歩もうとする正統派ウエスタン。何一つ新しいことをしていないのが逆に新鮮に思えるのが不思議！奇をてらった作品が、ただそれだけで評価されてしまうからでしょうか？ラストの銃撃戦は見せるものありですが、そこへ至るまでは、良く言えば丹念、悪く言えばかったるく感じます。がしかし、そこを責める気にならなかったのは、全て、ロバート・デュヴォルの存在！いまさらですが、素晴らしい俳優さんですね！さすがの出たがりコスナーもいい感じで譲ってます。
ロスを舞台に、少女売春の元締めであるディークを追うアウトロー刑事クロー（チャールズ・ブロンソン）の活躍を描くアクション作。となれば男の中の男ブロンソンの痛快アクションものと期待してしまうんですがねー、ブロンソンもののワースト3にランクされてしかるべく、かなり困った作品でした。なにしろ、東京から家族と共に赴任したスケベーな日本人ビジネスマンがクローの娘に痴漢！アジア人に対する偏見に囚われたクローが犯人を追うのですが、よりによってそのビジネスマンの娘がデュークに誘拐されてしまい、クローが怒りを爆発させるという展開！これだけなら、そこそこかな？って感じもするんですがねー！なにしろ、日本人家族は揃って英語ペラペラ、ビジネスマンが痴漢行為に及ぶ動機が、東京時代に電車内で痴漢されている美女（これが日本人じゃない）が喜んでいると思い込んだから、という陳腐なもの！そこらを笑い飛ばせる人のみに用意された作品でしょう。クローにつき合わされて殉死する相棒、哀れ！
これでも、「ナバロンの要塞」があるJ・リー・トンプソンが監督なんです。
「自分こそ偉大だ」と思っている男を墓場送りにする任務を与えられたコードネーム「孤独な男」はスペインへ。「孤独な男」の前に現れる連絡員たち（ティルダ・スウィントン、工藤夕貴、ガエル・ガルシア・ベルナル他）の情報を手にスペイン中を彷徨い、ついに標的となる男（ビル・マーレー）のアジトへとたどり着くのだった。
ジム・ジャームッシュが描くハードボイルドですから派手な展開は一切ありません。ストーリーもあってないようなもの！それでも許してしまうのは、ジャームッシュワールドに慣らされてしまったからかな？当然、誰にもお薦めとはいかないですけど、少なくてもスペイン僻地マニアなら楽しめること必至！ステレオタイプの観光映画以上のものありですから。まあ、そこを押すようではジム・ジャームッシュ派として失格ですけどね。
理想の結婚相手と思っていた彼に「ベッドでのテクがない」という理由でフラれた雑誌ライターのルーシー（モニカ・ポッター）は、ショックから立ち直れない日々。見かねた姉の強引な提案で5人の男達とブラインドデートをくり返すのだが・・・。
昆虫学者、元大リーガー、ショップ経営者、リッチな整形外科医、イケメンの脚本家（ガエル・ガルシア・ベルナル）の中の誰と真剣交際することになるのか？をラブ・コメタッチで描いた作品。大体はガエル・ガルシア目当てで見るのでしょうが、そっちの気は無いので、喰いつくところがないですねー。主演のモニカがキュートなんて誉めてる人もいたみたいですが、あんな鼻の穴がデカくてはねー！とてもキュートとは思えませんし、それ以前に5人それぞれの掘り下げ方が甘過ぎ！なわけで、さっぱり楽しくなかったってのが本音。大逆転でルーシーと結ばれる相手が読めてしまうのも残念！心に残ったのは、ルーシーとその相手が好きなのがブレッドの曲だったってことだけ。
同じ弁護士である父親の事故死に疑問抱き、勤め先を辞めて調査を続ける息子のヨナスは、父親が依頼人を無罪にできなかったことで命を奪われたのではと思い始めていた。そのことを恋人や、やはり弁護士である伯父に話しても相手にしてくれない。やけになったヨナスは、バーで出会った女と酔った勢いでホテルへ、目を醒ますと女は死体となって転がっていた！
「あなたもきっと騙される」みたいな謳い文句には騙されてばかり。馴れっこなので特にガックリってことはないですけど、予想通りの展開でしたね。強請られるヨナスが相手も確かめずにあっさり金を渡すあたりのヌルさの方が問題かも！それでもテンポ良く見せて、B級としてなら上々！デンマーク産ですがハリウッドに買われたそうです。ホントですかね？これぐらいの話ならゴロゴロしてそうなんだけど。
東北海坂藩、組頭、寺井甚佐衛門の一人娘以登（北川景子）は、幼少の頃から剣を学び、男にも負けない使い手。片桐才助（甲本雅裕）を婿にすることが決まっていた以登だったが、ある日、藩一の剣士、江口孫四朗（宮尾俊太郎）と出会い、立ち合うことで憧れ以上の感情を持つのだが・・・。
藩の命を受けた孫四朗が何者かの罠にはまり、任務に失敗！自害して果てるという展開に意外性を感じたので、結構見入ってしまいました。ただの大食いのスケベーなヤツと思われた才助が活躍しだすのにもビックリ！以登役の北川景子さんはキリリと気高く、悪くないですが、さすがに華奢過ぎて剣の使い手としてのリアリティは無し！ですが、所詮はアイドル映画ですから、そこらに突っ込んでもね。
海坂藩といえば、当然原作は藤沢周平です。
ニューヨーク市警のベテランコンビ、ジム（ブルース・ウィリス）とポール（トレイシー・モーガン）は捜査中の失敗で無給の停職中！別れた妻と暮らす娘の結婚資金を用意できないジムは、泣く泣く超レアなベースボールカードを売りに行くのだが、監禁前にコソ泥に盗まれてしまう。犯人を捕まえたものの、カードはすでに極悪なマフィアのボスの手に。取り戻そうとボスと取引するのだが・・・。
「ブルームーン」出身ですからコメディもオーケーなはずのウィリスなんですが、やはりアクションシーンになると生き生きしてます。なわけで笑いの方は、サタデーナイトライブ出身らしい相棒モーガンが盛り上げないとならんのですが、やはり「笑いのツボ」の違いか不発！二人に絡んでくるコソ泥のやたらめったらの下ネタ連発も勘弁して下さい！ということでコメディとしてはどうかと思いますが、アクション部分がテンポ良く処理されていてダレることなしですから、サラッと見る分には文句を言うこともないかも？
最愛の夫と子供二人に囲まれた裕福な白人家庭夫人リー・アン（サンドラ・ブロック）は、凍てついた夜、ひとりトボトボと歩く黒人少年マイケル（クィントン・アーロン）をほおっておけずに自宅へ泊めることに。麻薬中毒の母に見捨てられ、すさんだ日々を送りながらも、清い心を失っていないマイケルを、家族の一員として招き入れるのだった。
後にフットボール選手として成功するマイケルのリアルストーリーとのことですが、とにもかくにも一人の恵まれない人間の成功に手を貸したリー・アンの行為を、偽善と取るか、宗教的なキナ臭さも考慮しつつ持つべき者の優しさと取るかでその感想も違ったものになるでしょう。アメリカの馬鹿さ加減をあざ笑うのは簡単ですが、そういう、一見、知性派ぶった発想もそれはそれで当たり前過ぎてつまらない気もします。何の偏見も持たずマイケルを兄として慕い、フットボールのコーチ役を買って出る息子S・Jが、ともかく盛り上げてるし、サンドラ・ブロックの持つ明るさも生かされている気がするので、そこらを楽しみたいものです。
ロンドンで働く妻子持ちのアメリカ人スティーブン（ジョージ・シーガル＝彼のコーナーにも解説ありです）と、離婚して子供二人のイギリス人ヴィッキー（グレンダ・ジャクソン＝この作品で二度目のアカデミー主演賞に輝くも誰にもいじられること無し！）が出会い、恋に落ち、そして別れを選ぶまでを描いた辛口、大人向けラブストーリー。
辛口と書きましたが、辛いのは一方的にグレンダ・ジャクソンの方でして、ともかく毒舌三昧！やり込められるジョージ・シーガルも、売りである「押しの無さ」が目一杯なのでファン必見！何についても保守的なところがあり、皮肉屋なイギリス人と、ともかく欲しいもののためには貪欲、それでいてどこか憎めないユーモア感覚のあるアメリカ人との対比を描いた一編でもあります。
娼婦の娘シルヴィア（ペネロペ・クルス）が、下着会社の御曹司ホセルイスと愛し合い、彼の子供を身ごもってしまう。ホセルイスは結婚しようと思っているのだが、彼の母親コンチータ（ステファニア・サンドレリ）は、二人の仲を裂こうと色男のラウル（ハビエル・ベルデム）を雇い、シルヴィアに迫らせるのだった。
スペインの小さな町を舞台にした愛憎もの。のはずなんですがねー？な、なんとコンチータがラウルと関係し、燃え上ってしまうし、シルヴィアの母親カルメンやコンチータの旦那までもが絡んできての大騒動！ホセルイスとラウルがハム用豚肉で殴り合い、ホセルイス死亡！という結末も、登場する人々の開けっぴろげな大らかさに押し切られて笑うしか無し！一瞬、パゾリーニの艶笑もの「カンタベリー物語」を思い起こすほどパンチ力ありの作品でしたが、コメディなんだと思えない人にはちょっとキビシーかなあ？
サイコ犯を追ううちにその世界に取り込まれてしまった刑事クライン（ジョシュ・ハートネット）は、仕事を辞めて私立探偵となっていた。そんなクラインがアジアで行方不明になったシタオ（木村拓也）という青年を探し出すという依頼受け、フィリピンから香港へ。シタオは偶然助け出したリリという女性と暮らしていたが、リリを溺愛するマフィアのボス、ドンポ（イ・ビョンホン）も又シタオを追っていたのだ。
シタオは他人の痛みを身代わりとなって取り除くという不思議なチカラを持っているのですが、これってキリストってこと？だとすれば奥深い世界観があるのでしょうが、いかんせん、そこまでのものは受け取れませんでした。何かを恐れるあまり冷酷に振る舞うドンポへ、「あなたのためにワタシが存在する」と言うシタオ、そこにトラン・アン・ユン監督の思いがあるんでしょうがね？ちょっと観念的過ぎて楽しめなかったってのが本音です。けっこうグロいシーンもあるしね。
場末のバーで酔いどれては、マッチョなバーテンとの喧嘩に明け暮れるヘンリー（ミッキー・ローク）が、ある夜、インテリゆえに人間に失望し、やはり酒に溺れて暮らすワンダ（フェイ・ダナウェイ）と出会い、一緒に暮らすことに。ヘンリーもワンダも共に相手を思い、まともな仕事に就こうとするのだが・・・。
酔いどれ詩人チャールズ・ブコウスキーの自伝的作品とのことで、ブコウスキーが脚本も担当してます。ナルシスト役しかできないロークにはピッタリな役なんですが、ともかく薄汚いです。それでも、喧嘩相手のバーテンを存在させたことで、ヘンリーが真に忌み嫌うのはバーテン個人ではなく、「創造性のカケラも持たないマッチョ野郎」であり、ボロボロになるまで殴り合うことで彼等と対決しているのだという思いは伝わりました。エキセントリックな知性派ならお任せなダナウェイですが、力み過ぎてなくて良かったですね、なんかカッコよく見えました。