白人社会から「褒美の賞」をもらったせいか、それとも作品内容が「偽善」と映ったせいか、かつてはアフリカ系アメリカ人達の批判の的だったらしいが、それも、現在となっては「隔世の感」である。
モノクロ時代ではトニー・カーティスとの「手錠のままの脱獄」が良かったと思うが、果たして今見直しても通用するものか自信はない。 あの時代ならではの雰囲気があったと思うが、せつなかったラストと共に思い出として、心の奥にしまっておく方が幸せかもしれない。
ジョン・カサベテスとの「暴力波止場」は、マーティン・リット監督らしい生真面目な作品で、当然、誰にでもお薦めとはいかない。
色がついてからでは、ティブス刑事シリーズの第３弾「夜の大捜査線 霧のストレンジャー」が楽しめる。 麻薬組織と戦う若者達をバックアップするティブスの活躍が、淡々と描かれている。 共演に若者？だったラウル・ジュリア、「スーパー・フライ」のロン・オニール、妖しいお色気でせまるシェリー・ノースも。 １、２作目はクインシー・ジョンーズが担当したサントラもグッド！ ３作目はギル・メレに代わったが負けないデキ、こちらのＣＤ化はなされているのだろうか？
共演のトム・ベレンジャーが無口でとっつきにくい山登りのプロを演じた、「影なき男」でも刑事役だったが、ここでのポアチエはユーモアたっぷりで、結構、楽しませてくれる。 ワル役にクランシー・ブラウン、タダの山岳者役でアンディ・ロビンソン。
出演作のわりに未見が多いのは、正義派のイメージが強くてついていけなかったからだが、監督作品が案外バカっぽいのは、彼自身もそんなイメージを嫌っていたからかもしれない。