暗黒街出身の作家であり、脚本家であり、私の最も愛すべき監督である。
ベルモンドは勿論のこと、義兄役ミッシェル・コンスタンタンのタフガイぶりが素晴らしかった「ラ・スクムーン」は、マイベスト10に入る作品。
リノ・ヴァンチェラ、マルレーヌ・ジョベールの「最後のアドレス」、ドロンが「仁義」を重んじるジプシーの犯罪者を演じた「ル・ジタン」、金庫破りのために壮大な穴を掘る「掘った奪った逃げた」、忘れられがちだが、傭兵ものとしては群を抜く「狼たちの報酬」等は見逃してはならない傑作だ。 なお「ル・ジタン」の音楽はジャンゴ・ラインハルト。
脚本家としてはもっと凄くて、何度見ても引きずり込まれてしまうマイバイブル、「墓場なき野郎ども」、やはりフランス映画史に残るであろう「穴」、長編ながらまったくスキの無い「ギャング」はメルビルと組んだ作品。 色付きになってからは、レティシア役のジョアンナ・シムカスが輝いていた「冒険者たち」、ベルモンド、シムカスがおしゃれな「オー！」等、溢れ出る才能の持ち主だ。
最新作に小説「穴」を書き上げ、成功するまでを描いた自伝的映画「父よ」がある。 犯罪ものではないので、かつてのジョヴァンニ作品と比べるのは酷だが、命を賭けて子供を守ろうとする父親の姿が痛いほどに伝わってくるものだ。 印象的なのは、成功した作家を訪ねてきた、かつての務所仲間が、金に困っているのを察して有り金を手渡すシーンで、一度は受け取ったその仲間が引き返してきて金を返すのだった。 言葉少なに描かれるジョヴァンニ的心意気が失われていなく、とてもすがすがしかった。