押し出しのないルックスを生かしてのサッパリした笑いが身上なので、ベタなコメディよりシリアスぎりぎりの作品で良い味を発揮している。 特にキャンディス・バーゲン、ジェイムズ・メイソンとの「新・おしゃれ泥棒」、ロバート・デ・ニーロとの「ミッドナイト・ラン」は、モチゾー一押しの傑作で、いずれも単なるアクション・コメディの域を越えて人間の孤独が描かれており、そこはかとない哀愁が漂っている。
「ミッドナイト・ラン」が安っぽい人情ものにならなかったのは、嫌味にならない程度にさりげなく知性とユーモアを表現できるチャールズ・グローディンの魅力によるし、出過ぎにならない彼のキャラを受けた共演のデ・ニーロまでもが薄まった感じで、ややもするとやり過ぎに映るデ・ニーロにとっても傑作といえる作品だろう。
「新・おしゃれ泥棒」は脇にまわったメイソンが、かっさらっているのだが、ストーリー展開にも魅力があり、なにより宝石ドロの手口が楽しい、と思ったら脚本がグローディンってホント？だったら凄過ぎ！
他にも「ふたりのカリフォルニア」、「天国から来たチャンピオン」、「昔みたい」、「ウーマン・イン・レッド」、「デーブ」と、ＵＳのコメディとしてはベタじゃない作品が多いのだが、彼が出るとベタにならないと言ったら褒め過ぎか？ ここでは、クールなグローディンとしてはセンチメンタルが過ぎると思うが、「ふたりのカリフォルニア」が笑って泣けるロードムービィの佳作と言える。
作品的にはどうと言うことないはずの軽いコメディ「ウーマン・イン・レッド」は、ゲイ役を演じたグローディンの存在が不思議な重みを持たせてくれている。 モンロー並みのセクシーさを見せてくれる赤いドレスの女（ ケリー・ル・ブロック ）に魂を奪われるジーン・ワイルダーが主演。 主題歌はスティービー・ワンダーの「アイ ジャスト コール・・・・」で大ヒット！
グローディンが財産目当てに殺人を犯してしまう、ドジでお人好しの秘書役を演じた「天国から来たチャンピオン」は、リメークながら一級のファンタジーで、主演のウォーレン・ビーティが翳りを排して、明るく陽気に楽しませてくれる。 グローディンとしては得意とする役どころだが、類型でもある。不倫相手の富豪夫人にダイアン・キャノン。
最後に、その静かなる存在感を買われてか「ローズマリーの赤ちゃん」に産婦人科医役で出演という歴史あり。 当然、モチゾーも見逃していたのだった。