変態な叔父の経営するホテルの仕事に嫌気がさしたトシコ（小日向しえ）と、ヤクザの金を盗んで追われる身となった鮫肌（浅野忠信）が、ひょんなことから出会い、逃避行を続けるというスタイリッシュ・アクション。
これがタランティーノ以前の作品なら、かなりインパクトありでしょうが、所詮はフォロワー！ 脚本手抜きの言い訳となっているスタイリッシュ・アクションの類型！ と片付けようと思っていましたが、殺し屋山田（我修院達也）の存在が、あまりに魅力的でついつい引き込まれてしまいました。 それだけでも見る価値アリ！ いつもながら、サラッとしているのに、凄みが感じられる浅野忠信は流石！ 石井克人監督作品。
１９４５年、戦後混乱期のパリが舞台。「きちがい」とあだ名されるロバート（アラン・ドロン）をリーダーに、愛車シトロエンに乗り込み、執拗な警察の追跡もかわして強盗を繰り返すシトロエンギャングと呼ばれた男たちの物語。
思ったよりもアクションシーンが少なく、なにより、カーリーヘアで登場のドロンのチャラい若造ぶりに気抜けした一編ですが、ギャングの身内となってしまった人達の悲哀や、当時のフランス政府によるアラブ人狩りの様子がユーモラスに描かれていて、違った意味で見るべきものあり。 ドロンと組んで「ボルサリーノ」、「フリックストーリー」を撮ったジャック・ドレー監督作品。
或る小藩が舞台。 町を牛耳るヤクザと癒着する家老達の腐敗を暴くために送りこまれた、通称どら平太（役所広司）と呼ばれる新任の町奉行の型破りな活躍を描いた、山本周五郎原作となる時代劇。
ウソかマコトか、脚本には黒沢明、木下恵介、市川崑、小林正樹と名を連ねていますが、それにしてはありきたりな展開で、こちとら、成り行きはすっかりお見通しよ！ それよりなにより、呆れ果てたのが、密貿易の輩が、施錠するどころか、戸を開けっ放しで作業。 そこに追われる女（浅野ゆうこ）が逃げ込んで来ると、輩が「見られたからには生かしちゃおけない！」って叫ぶんだから。 これが仮にも大監督たる市川崑の仕業ですかね？
前作「カジノロワイヤル」の続編となるダニエル・クレイブ版ジェイムズ・ボンド２作目。 愛するヴェスパーを失ったボンドが、怒りと悲しみを胸に秘め、世界征服を企む謎の組織と対決するハードアクション。 容赦なく殺戮を繰り返すボンドは、ＣＩＡからも追われ、Ｍの信頼を失いながらも、やはり家族を殺され復讐に燃えるカミーユと共に敵に迫るのだった！
「やっぱり、コネリーでなくちゃあ」と言わせるためだけに作り続けられているシリーズですが、ダニエル・クレイブのタイトさは本物！ さっそうとバイクにまたがる姿は、一瞬、あのスティーブ・マックィーンを彷彿！ 英国人らしいユーモアやボンドにつきもののラブシーンを一切省いたために疾走感のある作品となっていますが、個人的には、こういう無駄のないアクションものは好きです。 ただし、スピード感を出すためだろう早回しの連続は、ちょっとメリハリに欠ける気がするけど。 監督は「チョコレート」のマーク・フォースター。
詐欺師のマニー（シドニー・ポアチエ）と泥棒デイブ（ビル・コスビー）のもとに謎の男からメッセージが届く。 罪を見逃す代わりに福祉施設でのボランティアを要請するものだった。 マニーとデイブは、貧しい黒人達の就職の世話をしながら、謎の男の正体を探るのだが・・・。
またまた、シドニー・ポアチエ監督主演よるアクションコメディですが、ポアチエの持つヒューマンさも生かされていて内容あり。 ただし、このヒューマンさを偽善と捉えた人がいたことも確かだろう。 後半は、かつてマニーに騙されたマフィアが復讐に迫るという凝った展開で、かなり楽しめる作品となっています。 カーティス・メイフィールドによるスコアにサエがなかったのは残念でしたが。
クソ真面目なスタスキー（ベン・スティーラー）とお調子もののハッチ（オーウェン・ウィルソン）が、麻薬組織相手にハチャメチャ大暴れするポリスアクションコメディ。
７０年代に放映された人気シリーズの映画化らしく、あの時代のファション、音楽にこだわったパロディ満載で、おっさん的にはかなり楽しめました。 なにしろ、二人がハーレーを乗りまわし、バイカーの溜まり場に聞きこみに行く場面では、ザ・バンドの「ウェイト」が流れますから。 大活躍の情報屋にはスヌープ・ドッグ、ドラッグ・ディーラーにヴィンス・ヴォーン、その愛人にジュリエット・ルイスとクセ者が揃ってます。
天草四郎に窪塚洋介、細川ガラシャに代わる謎の女クララに麻生久美子を配した、若者に媚び媚びのリメーク作ですが、魔物達と対決する柳生十兵衛役に佐藤浩市を使ったのだけが救いの凡作でした。 なにより、魔界から蘇った荒木又右衛門（加藤雅也）、宮本武蔵（長塚京三）らが滅びるシーンでのＣＧ使用があまりにチンケでいけません。
キリシタン弾圧により滅ぼされた天草四郎（沢田研二）が、妖術を駆使し、恨みを持ってこの世を去った細川ガラシャ（佳那晃子）や宮本武蔵（緒方拳）を魔界から転生させ、徳川幕府転覆を図るという、山田風太郎原作の荒唐無稽時代劇の映画化。
角川の強力なバックアップの下、深作欣司監督が金に糸目をつけずに作り上げた作品で、さすがのエログロワールドが展開されますが、妖怪どもを相手に奮闘する柳生十兵衛＝千葉真一の大袈裟なセリフ回しがハナについていけません。 ＣＧ使用じゃない分、アクションシーンには迫力ありですが。
しがない労働者ビリー（口八丁のビル・コスビー）と友人クライド（催眠術の使い手シドニー・ポアチエ）が、教会移転資金のために、ボクシング賭博で大儲けを企むコメディ。 見るからにか弱いチャレンジャーが催眠療法でハードパンチャーとなりチャンピオンに。 対抗する二組の胴元から金を奪うことに成功するのだが・・・。
ポアチエが、白人に媚びたイメージを打破するために監督、主演したブラックムービーですが、笑い爆発とはいかずとも、軽快で品のある作品に仕上がってます。 なにより、ここに取り上げたのは、カーティス・メイフィールドがスコア担当だから。 追っかけシーンでの軽快なサウンドは流石！ 個人的にはそれだけでも見る価値ありでした。
婚約者サム（ダーモット・マルロニー）との結婚に迷う大学院生フィン（ウィノナ・ライダー）が、卒論製作のために、キルト作りで集っている祖母達の町を訪ね、そこで知り合った初老の女性達の体験を聞き、自分の生き方を見出すという女性映画。
エレン・バーンステイン、アン・バンクロフトなどアクの強い大女優を揃えたわりには、さっぱりしてますが、肝心のフィンが地元の軟派青年レオンと簡単に寝てしまうのには納得いかず！ レオンへの思いとサムへの気持ちの揺れが、まったく描かれていないので、ラストも説得力なし。
在日コリアの青年スギハラ（窪塚洋介）は、リスペクトする友人ジョンイルの影響もあり、日本人学校へ進学。 美しい少女サクライ（柴咲コウ）と恋に落ちるのだが、サクライとの始めての夜、在日であることを告白。 サクライに拒否られ、改めて自分という人間に向き合わざるをえなくなるのだった。
差別問題を超えて人間の存在自体を問う、深みのある青春ものですが、理屈っぽくないのがなにより。 テンポが良いので、派手な展開がなくても楽しめましたが、友人ジョンイルの死がとってつけた感じなのが残念！ 脚本は、またしてもクドカン。
イスラエル要人を狙ったテロが続出する中、イスラエル情報部は、テロ活動家のリーダー、カリルを捕らえるため、ロンドンの劇団で活躍するアメリカ人チャーリー（ダイアン・キートン）を誘拐。カリルをおびき寄せるため、カリルの弟ミシェルの恋人役を演じるよう頼むのだった。
かったるいだろうル・カレ原作（未読です）を、さすがのジョージ・ロイ・ヒルが、うまく料理してけっこう盛り上がるサスペンスに仕上げてます。 がしかし、ミシェルの替え玉として近づいてきたヨセフを愛してしまったチャーリーが、思想より愛のために深みにはまるという展開には納得いかず。 あまりに形式的で女性蔑視では？
海底に沈んだ宝物を探すビクター（アンソニー・フランシオサ）とローザ（ヴェルナ・リージ）は、潜水夫の事故死で、新たに元海軍大尉のマーク（フランク・シナトラ）を雇うことに。お宝の代わりに見つけたのは、沈没したドイツ潜水艦だった！ 元ドイツ潜水艦長と整備士を仲間に、修理した潜水艦に乗り込み、豪華客船クィーン・メリー号の金塊を狙うのだが・・・。
一攫千金を夢見る男達の海洋アドベンチャーですが、見所満点でつくづくシナトラものに駄作なしを痛感。 男達の諍いにより、事態はあらぬ方向へと展開しスリル満点！ アメリカ万歳的な部分はあるにしても、それも些細なことと思えるほど。 原作はジャック・フィニー、音楽はデューク・エリントンとオーバーエイジなら見逃す手はなし。
１９０１年の南米アマゾン。 大農園主クリストファー（チャールトン・ヘストン）は、子供が欲しくて代理結婚の相手を求めていた。やって来たのは、気高くも美しいジョアンナ（エレノア・パーカー）だったが、女を知らないクリストファーは、彼女が再婚だと知り、快く受け入れることができず、本国へ送り返そうとするのだった。そんなおり、農園に軍隊アリの群れが・・・。
ＳＦＸの父と言われるジョージ・パル製作なので、時代がかった古くさーいパニックものかと敬遠してましたが、コンプレックスのかたまりで心を開かないクリストファーと、明るく勇敢なジョアンナが農園を守るために協力しあうことによって、次第に分かり合っていくというドラマとしても見るべきものあり。 ただし、虫が苦手な人には決してお薦めできません。 ってことは、ほとんどの人がダメってことでしょうねえ？ 虫が大好きな人って、そうそういませんから。
地球温暖化による海水温上昇が及ぼす異常事態を察知した気候学者ジャック（デニス・クエイド）は、副大統領に避難勧告を促すのだが、相手にされず、ニューヨークは津波によって水没。 その後、あらゆるものが一瞬にして凍結するスーパークリーク現象が起こり、地球は氷河期のような世界になろうとしていた。
物理的な説得力は別にしても、ＣＧ使用では実績のあるローランド・エメリッヒなので、それなりのパニックものに仕上がってます。 ただし、ジャックがニューヨークに残された息子サム（ジェイク・ギレンホール）を徒歩で救い出しに行く頑張り具合は、あまりにリアリティに欠けて残念。 欲張って親子愛まで詰め込んではみたものの、いかにもハリウッド的安っぽさ露見！
６年前、誘拐犯を取り逃がした上、人質の少年を救えなかった巻島刑事（豊川悦司）は、事件の責任をとらされ、地方の警察署に左遷されていた。 そんな巻島に川崎で起きている連続児童殺人事件の捜査主任の命令が下る。 巻島は、事件解決のためＴＶ出演し、犯人に語りかけるのだった。
犯人像を肥大化させることなく、新旧捜査陣のあつれき、視聴率戦争に毒されたメディア、そして事件解決より出世のための功名に走るキャリア組のどす黒さを描いて、地味な展開ながら緊張感ある作品に仕上がってます。 巻島に請われて捜査陣に加わるベテラン津田を演じた笹野高史がここでもおいしい。
パリの裏社会で危険な仕事を請け負っていた一匹狼のフランク（ブノワ・マジメル）は、暗黒街の大物クロードの信頼も得ていたが、そのクロードが何者かの裏切りによって逮捕収監。 壮絶な縄張り争いが始まる中、フランクの選んだ道は？
思わせぶりなタイトルで放たれる、この頃のフランス暗黒街ものには捨てがたい作品も多く、期待の一編でしたが、リンチシーンのエグサには閉口！ 特撮と分っていても、思わず目を伏せてしまいましたぜ！ ともかくハードなシーンの多いギャングものですが、その分、フランス映画ならではのムードは欠如。 もう少し、フランクという人間を描いて欲しかったし、入り乱れる犯罪者達の繋がりが説明不足なのも残念。
銀色の円盤に乗って火星人が地球にやってきた！ デイル米大統領（ジャック・ニコルソン）は、知的な宇宙人との友好条約を結ぼうと思ったのだが、火星人はレーザー銃を乱射！偉大なるアメリカが、アッという間に殺戮の場と化してしまうのだったあ！
ティム・バートンワールドには、いま一つ馴染めないワタシでも、思わず笑ったパニック超大作？です。 人間達（オールキャストの中には、ジム・ブラウンとパム・グリアが夫婦役で。 トム・ジョーンズも出演）の慌てふためく様をブラックに描いてますが、オチのとぼけ具合もならでは。 それにしても、まるで悪ガキのような火星人達のウムを言わせぬレーザー攻撃は痛快！
ロス市警のラドラー刑事（キアヌー・リーブス）は、亡き妻への思いにさいなまれながらも、正義のために手段を選ばず、極悪犯相手の危険な任務を引き受けていた。 そんなラドラーの行動を内部調査にチクったとウワサされるかつての相棒が、不審な死を遂げるのだった。
ジェイムズ・エルロイ原作、脚本による警察内部の腐敗を描いたポリス・アクションですが、ストーリー的には新鮮味に欠けるし、当然、「Ｌ．Ａコンフィデンシャル」ほどの深みもなし。 キアヌーのタフガイ役にも疑問ありですが、そこらのこだわりさえ捨て去れば、テンポ良く展開されるので退屈することなし！ 個人的には、このくらいの重すぎないアクションものは好きです。 やり手の上司役にフォレスト・ウィテカー。
１９８９年、ロンドン。 夜のテムズ川で大型船ボウベル号とクルーズ船マーショネス号が衝突！ 深くて速いテムズに沈むクルーズ船からの脱出を図る人々の姿を生々しく描いたパニックもの。
実話の映像化とのことですが、小品ながら息苦しいほどのリアリティがあり、ほとんどグサリと突き刺さることのない英国産サスペンスとしては上々のデキ。 救急側の情報伝達や警察の初動捜査など、ちょっとしたミスの連続が悲惨な大事故につながってしまった裏事情を丁寧に描いています。
１２才の時、ぜんそくの療養で訪れた島でおぼれた奈緒子（上野樹里）を助けてくれた人が、波に飲まれ溺死！ その息子、雄介（三浦春馬）に「おまえのせいだ！」となじられたことを忘れられなかった奈緒子は、高校生となった雄介が駅伝ランナーとして注目されている事を知り、再会。 雄介はそっけなかったが、事情を知る陸上部監督（笑福亭鶴瓶）は、奈緒子に合宿の手伝いを頼むのだった。
ずば抜けた力を持つ一年生の雄介と、先輩部員とのあつれき、和解、友情を描いたスポーツもので、その部分にはいくらか見る価値あり。 なので、「奈緒子」というタイトルには違和感あり！ ただし、アラも多くて、奈緒子を助けた雄介の父親の溺死にはまったくリアリティがないし、監督の病気もとってつけた感動の安売り！ ボーイッシュが売りの上野樹里が、女の子走りでなくて良かったけど。
ニューヨークの養護施設で育ったエヴァン（「チャーリーとチョコレート工場」のフレディ・ハイモア）は、生まれつき、類まれな音感を持っていて、大好きな音楽を通して、いつの日にか両親と再会できることを信じていた。 そんなエヴァンが施設を抜け出し、元ストリートミュージシャンのウィザード（ロビン・ウィリアムス）と出会い、オーガスト・ラッシュ（原題）と名乗って売り出されるのだが・・・。
自分達に子供がいることさえ知らずに別れてしまった両親とのドラマティックな再会を描いたファンタジーです。 甘っちょろいお話と言えばそれまでですが、ファンタジーだと思えばケチをつける気にならないほどの爽やかさあり！
初老の推理作家アンドリュー・ワイク（マイケル・ケイン）とその妻の浮気相手の俳優マイロ（ジュード・ロウ）が、一人の女を巡ってだまし合いをする密室劇。 ローレンス・オリビエと若き日のマイケル・ケインで撮られた同名映画のリメークですが、ネタバレを超えて伝わるものなしのガッカリものでした。 オリジナルはかなり楽しんだ記憶があるのですが、出演者が二人なので、どう頑張っても意外性は見出せず、９０分という放映時間の短さだけが救い。 はなから企画的に無理だったってことでしょう。 監督はケネス・ブラナー。 売りにしたかったのだろうハイテク装置の無機質なワイクの家も、どうということなし！
教師となって故郷へ戻ったキャサリン・バルー（ジェーン・フォンダ）を待ち受けていたのは、父の牧場に立ち退きを迫る開発会社とのトラブルだった。 殺し屋（リー・マービン）に父を殺されたキャサリンは、拳銃使い（リー・マービン二役）を雇い、復讐のため開発会社の金を狙って列車強盗！ 女盗賊となった彼女を、人々はキャット・バルーと呼ぶのだった。
肩のこらない、ほのぼのタッチの笑える西部劇ですが、さりげなく人種差別問題やアメリカの保守的体制をチクッてます。 後年、ちょっとエラそうな態度がハナについたジェーンですが、ここでは明るく楽しくハジけて魅力的。 リー・マービンがオスカー主演男優賞＋語り部役にナット・キング・コールとファンなら見逃す手はなし！
かつて、交渉人として少年の命を救えなかったというトラウマを持つジェフ・ダリー（ブルース・ウィリス）は、田舎町の警察署長になっていた。 ある日、暴走する若者達による人質事件が発生！ 人質となったのがマフィアの会計士の家族だったので、組織が動き出し、タリーの妻と子供を拉致、開放の条件として機密資料の回収を迫るのだった。
会計士は人質になった子供のため、タリーもまた家族の命を守るため、同じ目的に向かっていくという展開は楽しめました。 小品のサスペンスですが、頑張り過ぎないウィリスには好感！ 会計士の子供が家の中のダクトを這いずり回るのは、「ダイハード」へのオマージュ？