アメリカン・ニューシネマの代表作、「哀しみの街角」、「スケアクロウ」では、 哀しい目をしたパチーノに魅了された。
ルメットの代表的な二本、「セルピコ」では腐敗と戦う孤独な警官を、「狼たちの午後」では一転、 エキセントリックなゲイ役で、現在のパチーノスタイルを確立したと思われるが、個人的にはクドさがつらくなりつつもあった。
もちろん「ゴッドファーザー」は外せない。
若きパチーノがトイレに隠してあった銃を手に取るシーンは、言葉も出ないほどの緊張感だったが、 理屈を超えた映像世界の魔力が確かにそこにあった。 ソニー兄貴のジェイムス・カーンのキレ具合は感動的ですらあったし、 ニューシネマの申し子、ジョン・カザールの持つ「弱さ」はそれ以上である。
冷徹なパチーノが幅をきかせだす「パートⅡ」はかなり落ちる気がするし、 「パートⅢ」に関しては、多分皆様と同じ思いだ。
この先はクドいパチーノをこき下ろすことになりそうなので、簡単に済ませます。 「喝采の陰で」は彼にしては異色のホームドラマだったが、もう少しさっぱりしていれば。
「スカーフェイス」は映画館でなかったら耐えられただろうか？ 正直、辛かった！長かった！ ニューヨークでのシーンとか、良い場面はあるんだけど。
やはりミシェル・ファイファーとの「恋のためらい フランキー＆ジョニー」はきびしい。 パチーノのロマンチックは、どこか痛々しいんだよね！
エレン・バーキンとの「シー・オブ・ラブ」もハズレ！ ＴＶ用のカット版だったのが効をそうしたのか「セント・オブ・ウーマン 夢の香り」は悪くなかった。 ガブリエル・アンウォーはビューティだ！
演技合戦となったデビッド・マメット脚本の「摩天楼を夢見て」は クドさもやや薄まっていたが、作品的には退屈。 「ヒート」はヴァル・キルマー、トム・サイズモア が出ているので見るべし！
その他では、「ディアボロス/悪魔の扉」、「フェイク」、「インソムニア」、「インサイダー」、「リクルート」、「トゥー・フォー・ザ・マネー」ぐらいしか見ていないが、彼が出ると重苦しい展開になるのは覚悟しなければならないが、その分安っぽさがないので信頼しているファンもいると思う。
「インソムニア」は、ハリウッドのアイデア不足を露呈するリメーク作だが、 出てきた時からすでにインソムニアっぽいパチーノは水準。 それでもオリジナルにかなり忠実に描いているのに迫力があったのは、パチーノの存在感に負うのかも？ ただしオリジナルの「不眠症」を見ていたのでスリルは半減！ 謎を解く女性警官役ヒラリー・スワンク （ムラっ気のあるサム・ライミ監督としては上出来の部類「ギフト」では、キアヌーに ボコボコにされていた）はインパクト有り。
最新作は「オーシャンズ１３」のカジノのオーナー役。 作品的には褒められたものじゃないけど、ほんの少しだけど古き良きハリウッド映画の香りがしたのが救い。