なんといっても「ゴッドファーザー」のソニー役が強烈。 いったん頭に血がのぼると手がつけられなくなる暴れっぷりはとても演技とは思えず、このキレ具合こそが見ているものをのめり込ませる最大のポイントだったと思う。 やられっぷりもド派手だ。
コッポラ初期の傑作と言われている「雨のなかの女」の、不能になった青年役にはいまいちピンとくるものがなく、内容的にも世間の評価ほどのものは感じなかった、と思う。
「友よ、風に抱かれて」はアクションも無く地味な作品なので、コッポラならではの壮大な映像世界を期待した私には物足りなさが残ったが、淡々としたカーンには風格が感じられたと思う。 いずれも曖昧な評価で申し訳ないが、遠い昔に見たぼんやりとした印象なので、無視して下さい。
巨匠ハワード・ホ−クスが、男の友情を描いて胸熱くさせる傑作西部劇「エル・ドラド」の、若造ミシシッピー役は私の知る限りでは、最も軽いカーンが楽しめる作品。 アル中保安官役のロバート・ミッチャムの持つ陰りが魅力的だった。 もう一本のホークス作品、「レッドライン7000」は華やかな女性達に囲まれたレーサー達の、危険と隣り合わせの喜びや苦悩を描いた作品だが、ややユーモアに冴えがなく残念。 ここでのカーンは、エキセントリックな面を控えていて普通人らしく、悪くない。
「シンデレラ・リバティ」は単なるお涙頂戴ハンカチムービーだが、それだけで切り捨てられないのは、心暖かい水兵役を演じた好漢ジェイムズ・カーンの存在による。 マーシャ・メイスンも良いのだが「当たり前」でもある。
カレル・ライス監督の「熱い賭け」は、カーンが大学教授役ということではずしたかと思いきや、ギャンブルにのめり込み全てを失ってしまう男を熱演。 アイデンティティを求める人間の孤独が描かれている作品と言えば、あまりに過大な評価になるだろうか？ ただし展開はかなりかったるい。「スタスキー＆ハッチ」のアントニオ・ファーガスがいたぶられる役で。
個人的には最も気に入っている「ザ・クラッカー 真夜中のアウトロー」は、誰にも支配されないことを信条とする孤独な犯罪者カーンが、やっと手に入れた幸せの全てをなげうって復讐に燃える男を演じて素晴らしい。 虚無感の中を死に向かって突き進むカーンのクールな凄みは、最高にタイトだ！ 監督にマイケル・マン。
このペースで書き進めると終りが見えないので、あとは簡単に。 アラン・アーキンとの「フリービーとビーン大乱戦」は笑い爆発とはいかないが、カーンよりアーキンを買っている人にはお薦め。
ペキンパー監督にしてはアクションがヌルい（ というか笑えるかも ）、「キラー・エリート」は違った意味で見るべきかも。 過去の栄光を知っていればいるほど哀しくなる、昨今のワンパターン化しつつある重厚な悪役の中でも、最もつらかったのが「フレッシュ・アンド・ボーン 渇いた愛の行方」の悪い父親役だ。 デニス・クエイド＆メグ・ライアンの愛憎ものだが、作品の不出来もあり二度と見る気にならないし、このへんのジェイムズ・カーンしか見ていない人に、彼のキャリアが軽視されてしまうのが残念でならない。
老いてからのカーンなら、フィリップ・マーロウ役に挑戦した「マーロウ最後の事件」なんかどうだろうか？ ストーリー的にはチャンドラーものの類型を出ずも、あの時代（ エンディングはケネディがダラスに向かった日 ）のムード満点。 監督にボブ・ラファエルソン。
最後におたくネタになるが「テキサスの七人」というウエスタンでは、ふさふさロン毛のジェイムズ・カーンが見られる。 他にも若き日のジャン・マイケル・ヴィンセント、マイケル・サラザン、ドン・ストロード、そしてハリソン・フォードも。
追加報告
新作「ブラッド・クライム 血に染まる森」では、息子を殺された保安官役で。 押さえてきた怒りを爆発させるシーンはさすが！クールな表情で凄みを発揮するジェイムズ・カーンは、老いてもなお魅力的だ。
内容的にはアル・パチーノでリメークされた「インソムニア」、古くはイブ・モンタンの「真夜中の刑事 パイソン357」に近いテイストを持つ刑事ものサスペンスで、事件の発端となる「知らない土地で野宿している時、彼女を一人にして買い物に行く刑事」という有り得ない脚本さえ許せれば、結構楽しめる。 但し、テレフューチャー版でもあり、スケールは極めて小さい。
(04/1/25)