石油をめぐる買収を担当するトム（クリスチャン・スレーター）とその部下アビーとが、国際的陰謀に巻き込まれていく企業ものサスペンス。 前任者だった友人リチャードの死の真相を知ったトムだったが、愛するアビーを人質にとられて・・・。
個人的には、単なるB級ものとして斬り捨てられずにいる作品が続くスレーター主演のサスペンスですが、ここでもとってつけたようなアクションでお茶を濁すことなく、丁寧にまとめられていて好感！灰色の結末も悪くないと思うけど、全体に地味なのでドンパチファンにはお薦めできず！ かといって、本格ミステリーファンを納得させるにもちょっと弱いので、語られることなく片隅にあるのもやむなしか？
戦災孤児だったモデスティが、その度胸と能力を買われカジノのボス、ルーシュの下で働くことに。そんなある日、ルーシュに恨みを持つ若いギャング、ミクロスがルーシュを暗殺！ 金庫の大金を狙ってカジノに乗り込んできた。
金庫の鍵を持つガルシアが到着するまで、モデスティとミクロスが人質の解放を賭けてルーレットで勝負するのだが、ミクロスの要求はモデスティが負けたら、彼女に過去を語らせるというもの。 そこらの展開にはちょっとだけ制作総指揮クエンティン・タランティーノ色あり！ しかし、全体にサラッとしていてドラマ的にもアクション的にも喰い足りないデキな上、モデスティ役のアレクサンドラ・スターデンも、さしたる魅力なしなので、タランティーノの名を借りた凡作と片づけられても仕方ないかもね。
去って行った妻に夜毎電話してしまうジェシィ（トム・セレック）は、妻に「もう、電話しないで」と言われてしまう。 そんなジェッシィへのカウンセラーのアドバイスは仕事に集中すること。そんなわけで未解決の強盗事件の再調査を始めるのだが・・・。
同時進行のレイプ事件に絡むエロティック美女にショーン・ヤング出演も、驚くほどに小さな役だったのが何よりもミステリー。 新しく署で働くことになるローズ役にキャシー・ベイカー、マフィアのボスにウィリアム・サドラーとTVシリーズにしては分厚い布陣。 それに見合うだけの内容もありなのでけっこう楽しめました。 なにより、昏睡から覚めたスーツの勘が冴えまくり、事件解決に迫るのがユーモラスで痛快！
マサチューセッツ郊外の小さな町パラダイスの警察署長ジェッシィ（トム・セレック）の活躍を描くロバート・B・パーカー原作のシリーズもの。湖に浮かんだ腐乱死体は、14才の少女ビリィ・ビショップ。 ビリィが妊娠していたことから同級生が疑われるのだが・・・。
ジェッシィの活躍と書きましたが、酒のせいで妻に去られたジェッシィはカウンセラー（ウィリアム・ディベイン）に通う身で、ハードボイルドというよりじっくりした人間ドラマとしての味わいが楽しめるシリーズのようです。 なにしろ、最初の一本目なんで。 同時進行で描かれる家庭内暴力事件で部下スーツが銃弾を喰らい昏睡状態に。
唯一の生き甲斐だった娘を未成年グループにレイプされた上、命まで奪われてしまった長峰重樹（寺尾聡）が、絶望の中、自らの手で犯人たちに手を下そうとするのだが・・・。
未成年犯罪を扱った東野圭吾原作ものの映画化ですが、主演が「良い人」専門、意外性ゼロの寺尾ですから、結局は想定内のありきたりなヒューマン・ドラマに終わってました。 今さらながら、悲しみ以外に何一つ残らない被害者側に比べて、加害者の利益ばかりが追求されているとしか思えない展開には訴えるもの有りですが、テーマとしてはやはりありきたりなものでしょう。
スターになるのを夢見る高校生ローラ（リンジー・ローハン＝ワルさがたたってか、現在、獄中の身）は、家族の都合でニューヨークを離れることに。 転校先で出会ったエラとロックバンド「シッダルタ」の話で盛り上がるも、やはり「シッダルタ」のファンで彼らのコンサートに招待されたことを自慢する目立ちたがり屋のカーラと対決するのだった。
他愛もない青春映画ですがテンポが良いので難なくクリア！ リンジー・ローハンにはまったくオーラを感じなくても、そこそこ楽しめましたから、ファンなら見逃す手は無し！ でしょうが、今なお、リンジーのファンを名乗る人はありや？
薬害訴訟中の大手農薬会社の弁護士アーサーが、突然、イカレた行動をとって仕事を放棄したため、同じ弁護士事務所のフィクサー（もみ消し屋）のマイケル（ジョージ・クルーニー）が事態収拾に乗り出すことに。 ところが数日後、アーサーが自殺！ 友人でもあったアーサーの死に疑問を抱いたマイケルが、アーサーが掴んでいた真実を探り出すのだが・・・。
ギャンブルですった上に、従弟の借金の肩代わりにも追われているマイケルが、「金」に転ぶと思わせて、そうじゃないのは誰もがお見通し！なのでオチは弱いけど、マイケルまでも命の危険にさらされる展開にはジタジタしたスリルあり！ 社会派サスペンスとしては良くできてますが、しつこいけど、クルーニーは結局はええかっこしい！なんで作品的には意外性に欠けて損してる気がします。 苦労人のクロウニーにはその辺を逆手にとってほしい気がするんだけど、ね。 まあ、かなり欲張った意見ですけど。
銀行のコンピューターセキュリティ管理主任ジャック（ハリソン・フォード）は、ヘッドハンティングと称して近づいてきた男達によって、妻（ヴァージニア・マドセン）と子供を拉致され、自分の勤める銀行のハッキングを手伝わされることになるのだった。
コンピューターを管理するハリソンって似合わない！と思ったら、やはり、最後はヨレヨレながらもアクション展開に持ち込んでました。 結局は頑張る良い人＝ハリソン・フォード！それ以上のもの無し！ ジャックの秘書役でちょっとした活躍を見せるのが「24」のメアリー・リン・ライスカブ。
ニューヨークの生活に疲れ、故郷に舞い戻った作家志望のジム（ケイシー・アフレック）は、温かく迎えてくれた兄や母に感謝する気持ちもないほど無気力なまま。そんなジムがバーで知り合い一夜を共にしたアニカ（リブ・タイラー）と共に、夢も希望もない生活から逃れようとするのだが・・・。
ジム以上のダメ人間な兄、優しいけれど、未だ子離れできずにいる母、そんな家族を嫌いながらも、依存し続けているジムが、自分の方がずっとダメなんだと気づくまでを、決して大上段からではなくユーモア溢れるタッチで描いた作品。 まるっきり他人事とも思えないところが多かったせいか、ココロに沁みるものありでした。 さっぱりした人生ものが好きなら、多分失望しないでしょう。 監督はスティーブ・ブシェミだあ！ やったあ！
60代となったマイケル（アル・パチーノ）の願いは、一家を犯罪ビジネスから手を引かせることと、継承者を見つけることだったが、身内の裏切りから抗争となり、兄ソニー（ジェイムス・カーン）譲りで血の気の多い甥ビンセント（アンディ・ガルシア）を後継者とせざるを得なくなるのだった。
公開時は、クライマックスがあまりに芝居じみていてかったるく感じたのですが、その点は今見直しても、やはりツライもの有り！ですが、犯罪組織との繋がりを断とうとする新法王暗殺事件とのリンクは、その昔では理解に遠かったので、新たな見方ができました。ある程度の作品は2度見る価値ありってことです。 マイケルの娘役でソフィア・コッポラ、裏切り者ザザ役でジョー・モンテーニャ。
南北戦争で片足を負傷したダン（クリスチャン・ベイル）は、妻と二人の息子とともに小さな牧場をやっていたが、日照り続きで借金の返済もままならず、牧場維持の金を得るため、名うての大悪党ベン・ウエイド（ラッセル・クロウ）を護送するチームに参加するのだった。
14才の息子のために男として父親としてのプライドを示そうとするダンと、そんなダンにシンパシーを感じるベンとの間に生まれる奇妙な友情を描いたウエスタンです。 ベンを助けようと必死だった手下より、ダンのプライドを選んだベンの行動は映画的にはカッコいいのだろうけど、手下の身になってみればとてもじゃないがやってられないだろうもの。 そんな展開はとてもじゃないが好きになれません。
父親に捨てられた祐太（阿部サダヲ）は、あずけられたハムカツ屋で一生懸命働き、ついには店を継ぐまでになっていた。 そんな祐太にはまだ見ぬ弟（瑛太）がいたのだが、その弟が芸人として成功しているのを知り再会を望むのだが・・・。
次から次と繰り出される「笑い」と「泣き」の寸止め攻撃には、見事なまでの宮藤官九郎（脚本）ワールドが展開されてます。 なので、クドカン理解できずのワタシには試練でした。 がしかし、笑顔を絶やさないことが、唯一、祐太が生き抜く手段だったのと同じように、芸人となった弟も人から笑われることでようやく生き抜いてきたのだというテーマが、クドカン流「おふざけ」の分厚いオブラート越しに伝わってきたので、不本意ですが、ここは褒めざるを得ません。
事件の被害者、目撃者、刑事、私立探偵などの「財布」が語り部となって「連続保険殺人」の謎に迫っていくという、宮部みゆき原作らしい社会派サスペンス。
制作がWOWOWとのことでスケールの点ではTV映画の域を出ていませんでしたが、財布の語り口による文学的な味わいの中に、人間の奥底に巣食う様々なエゴイズムが浮き彫りにされています。 ただし、文学的味わいとはかなり褒めた表現でして、サスペンス的展開としては無理ばかり！ なので、人によっては真面目過ぎて面倒くさいだけの退屈な作品に映るかもしれませんね。
元妻アリス（マージ・ヘルゲンバーガー）や音信不通だった娘とやり直す夢を抱き、マフィアの麻薬を強奪したジョン（ヴァル・キルマー）が、麻薬を捌くまでをのんびりテンポで描いたヒューマンサスペンス。
懲りずに挑んだB級キルマーアクションですが、麻薬強奪のアクションシーンは随所にフラッシュバックされるだけで地味なので、その点ではさほど見るべきものなし！なんですが、奪った麻薬を取引する公園で出会った黒人少年との不思議な関係が味になっていて残るものあり。 ラスト、アリスと共にフロリダを目指すジョンの未来に不安を覚えたのは、いくらかでもジョンの人生に共感したからかも、ね。
乗客15人を乗せたバスに時速80キロ以下になると爆発するという特殊爆弾が仕掛けられた！ 犯人は元爆弾処理班だったハワード（デニス・ホッパー）。 運転手の負傷で代わりに運転することになったアニー（サンドラ・ブロック）と乗りこんできたSWAT隊員のジャック（キアヌー・リーブス）の活躍、そしてハワードとの対決を描いた痛快アクション作。
かったるさゼロのスカッとしたアクションです。 見直してもそう思うのですから、皮肉ではなく立派な娯楽作品なんでしょう。 いつもながらデニス・ホッパーは、とことん悪人には思えないのですが、それはこの作品にプラスになっているのでしょうか？ 首を吹っ飛ばされて、なんか可哀想だよー！ 少なくともサンドラ・ブロックの持つ明るさはプラス。
初仕事で子供を巻き込み殺してしまったヒットマン、レイ（コリン・ファレル）は、ボス、ハリーの命令で相棒のケンと共にベルギーのブルージュという街に身を隠すことに。厳格でプライドの高いハリーは、子供の命を奪ったレイを許さず、ケンにレイ殺害を命じるのだった。
落ち込んで自殺寸前のレイを救ってしまったケンまでもがハリーに狙われることになるのですが、これでもわかるように殺し屋三人が人間的。そこらを時にユーモラスに、時にクールに描いて不思議な魅力あり！ ハリーが冥土の土産にレイに見せてやりたかったという「ブルージュの街」がまたおとぎの国のような美しさ！そこで出会う映画スタッフ、ジミーとのベタじゃない友情関係も良かったので、いろんな意味で見せ場ありの作品でした。
余談ですが、コリン・ファレルの良く動くゲジゲジ眉毛にはイロオトコの資格なしー！と見ましたが、いかが？
ATMの手数料に文句タラタラのジンクスが銀行で強盗団に遭遇！ あわてて金庫に逃げ込んだものの、中にいた女行員ジェシカは強盗団の仲間でハッキング中！ 金庫に閉じ込められた二人と、銀行で人質を取る強盗たちと、交渉に当たる刑事とのながーいながーい駆け引きが始まるのだった。
肝心の強盗シーンが端折られていてアクション的見せ場は一切なし！ なので、ほとんどの人がガックリでしょう。この手の作品には何度も喰らわされているので慣れっこですから、けっして怒りませんよ、ワタシは！ともかく見なきゃあ始まりませんから。 随所にとぼけた感じを交えているんですが、残念ながら笑いのツボを刺激せず！ 共感できたのはATMの手数料への怒りのみでした。 自分の金を下ろすのに手数料払うって、どー考えてもおかしい。
夜行列車にぎりぎりに乗りこんできた客が突然死！ その客が大事に抱えていた不思議な箱の中に宝石が入っているのを見た乗客のピートとクロエは、車掌のマイルズ（ダニー・グローバー）を抱き込み、死体を川に投げ捨て、宝石をネコババしようと企むのだが・・・。
序盤の死体の始末にあたふたする様（クロエがスプラッターの如く死体を切り刻むのだよ）はスリルありで、他の乗客や警察が絡んでくる展開も悪くないのですが、問題はこの宝石が入った箱の存在！ ネタばれになるのでここまでにしておきますが、ある種ファンタジー仕立てのミステリーとだけ記しておきます。
5年ぶりに出所したギャング団のボス、フランク（クリストファー・ウォーケン）は片腕のジャンプ（ラリー・フィッシュバーン）と共に勢力を拡大。その一方で生まれ故郷サウスブロンクスの破綻しそうな病院を再建し、ギャングでなければ出来ない方法で街の浄化を進めようとするのだが、激しい抗争の中、無謀な刑事達（デビッド・カルーソ、ウエズリー・スナイプス）が法律無視でフランクを仕留めようと動き出すのだった。
この頃リメークされ、一部カルト視する者まで現れた「バッド・ルーテナント」のアベル・フェラーラが放ったダークな暗黒ものですが、そのヌメリ気のある映像とヴァイオレンスには伝わるもの有り！とはいえ、ウォーケン目当てで見に行った当時はA級じゃなかったので、ちょっと気落ちした記憶が。 見直したら、黒人やスパニッシュばかりを手下にする白人リーダー、フランクの貧しい者の味方みたいな部分がうっすらながら見え隠れしていていて、確かに、ただのB級アクションで終わってませんでした。もう少し、フランクの心情を描きだしていたらA級扱いなんでしょうが、そうしないところがアベル・フェラーラ世界なんでしょう。ちなみにこの作品以外のフェラーラ作品では4回ほど痛い目にあってますから、褒めすぎ注意！
1990年12月東京。 15年前に起きた「女教師の飛び降り自殺」が殺人だったとのタレコミによって再調査が決定！残り時間はわずかに24時間。「3億円強奪事件」を迷宮入りさせてしまった満呂木（上川隆也）がリーダーとなり、当時、その学校の生徒だった3人を取り調べるうちに、意外な事実が・・・。
「死後硬直」とか「海外で過ごした分は、時効日数に計算されない」とか新鮮味のないネタが多いし、「3億円事件」へのリンクにもかなり無理を感じましたが、それでも引っ張るものありだったのは、原作（横山秀夫＝未読）がしっかりしていたからでしょうか？邦画ミステリーとしては退屈しないデキでした。
過疎の進む小さな村を舞台に、住民に慕われ、信頼されている医師伊野（笑福亭鶴瓶）をめぐって巻き起こる騒動を描いたヒューマンドラマ。 都会で医師をしている鵜飼りつ子（井川遥）が、母親の容態を心配して診療所にやってきたことがきっかけで伊野が行方知れずに。どうやら、伊野は資格を持たないニセ医者だったのだ。
伊野がニセ医者だったことが発覚すると村民たちの態度が一変するのですが、そこらに、いかに人間が地位や肩書に振り回されていて、肝心の本質を見ていないかという西川美和監督の思いが伝わります。 とはいえ大上段からではなくユーモアで包み込んで見せているのでお仕着せがましさは無し！と褒めていながら、なんですが、病気の老人がゾロゾロ出てくる展開にはウンザリで何度途中でやめようと思ったことか、個人的には決して好きな作品とは言えません。