みせかけの貫禄にたよらず、
まだまだハードな役で凄んでほしいものだ！
でかい、でかくてごつい！その上、見るからに悪党ヅラで、何かというと力ずくでケリをいれたがるタイプで、誰が見てもギャングかポリス、または、ギャングの心を持ったポリス、それ以外にイメージが湧かないのが、このブライアン・デネヒーです。
まずは、おっかない系ポリス役を紹介しましょう。
大ヒットシリーズとなった「ランボー」では、ベトナム帰りのスタローンを、浮浪罪で強引に捕まえようとする田舎警察署長を演じましたが、あまりにひどい扱いを受けたランボーの怒りを買い、街中火だるまにされた上、異常に強いスタローンの銃弾を喰らい火の海に突き落とされてしまいます。単細胞スタローン映画としては、「ロッキー」のようなクサさが無いぶん救われるデキで、妥協を知らず、最後まで戦い抜こうとするデネヒーの存在も、ランボーの「孤独感」と「怒り」をしっかり盛り上げました。
続いては、弟の死に疑問を抱き、調査のためにロシアまでやって来たニューヨーク市警の荒くれ刑事デネヒーが、ロシア警察のウィリアム・ハートと組んで犯人グループを追いつめる「ゴーリキー・パーク」です。ここでの彼は、悲壮感すら漂うがむしゃらさを見せ、このまま悪役専門で終わらせるわけにはいかないゾ、と思わせるに十分な魅力でした。密輸王リー・マービンにズタズタに切り刻まれるやられっぷりも迫力満点もの。
他には、ハマリ役過ぎて味わいに欠けた「シルバラード」の悪徳保安官、見ている方が恥ずかしくなるようなレッドフォードのタップが拝めた「夜霧のマンハッタン」の事件のカギを握る刑事役などがありますが、Ｂ級アクション・ファンならずとも、気にかかる存在になりつつあったブライアン・デネヒーは、その名が売れるにつれて、案外抜け目の無いタフガイ刑事役がまわってくるようになりました。
それでは、ここからは、抜け目無い系ポリス役を紹介します。
共演のブライアン・ブラウンと共に、デネヒーにとっても決定的な一本となったのが「Ｆ／Ｘ引き裂かれたトリック」でした。デネヒーは仕事一筋だけど、型破りのはみだし刑事で、最後はちゃっかり、悪党の金をせしめる男を渋くキメています。特殊効果マンのブラウンが、その技術をフルに生かして盛大に盛り上げたので大ヒットとなり、続編の「Ｆ／Ｘイリュージョンの逆転」も作られました。こちらは、引退したデネヒーが、トラブルに巻き込まれたブラウンを手助けするのですが、クールなタフガイ役がますます好調で、なんと、レディに惚れられて鼻の下をのばすシーンもあるのです。当然、レディは事件に巻き込まれ、殺されてしまうのですが・・・。前作以上に、スケールアップされた上に、軽いギャグまで盛り込んだ見応え十分な内容で、両ブライアンの代表作になりました。
すっかり人気者となったデネヒーですが、ジョン・フリン監督の「殺しのベストセラー」では、警官で作家という、売れる前ではちょっと考えられないような役でした。しつこくつきまとってくる組織の殺し屋、ジェイムズ・ウッズとの深い絆に揺り動かされながらも、ハードな男の内面まで見せようとするジョン・フリンお得意の題材でしたが、いささかシチュエイションに無理があったこともあり、期待ほどのデキではありませんでした。
知的なデネヒーというのもハズしたと思いますが、ウッズの方は、結構マニア受けした「ザ・コップ」のタフガイ、ロイド・ホプキンス（原作のイメージでは、もっと骨太でがっちりしたタイプと思っていたので、がっくりだったが・・・）に比べれば、彼ならではのネクラで薄気味悪さが存分に出ていて面目は保ったと思います。
その他では、デネヒーが、堂々の主演で張り切った「ブルーヒート」も退屈しないデキでしょう。お得意の決してクリーンじゃないけれど一線だけは守りつづける警官役を熱演しています。警察を辞めてまで仲間を殺した巨悪を追う、ポリス魂を見せてくれますが、ここでは奪い取ったマフィアの金を返して、ますますイメージアップ！不滅のブライアン・デネヒー像を確立したと言えるでしょう。
とても民間人とは思えない活躍を見せたのが、タイトルからしてＢ級の「マッドリベンジャー／復讐の掟」でした。異国ドイツで、テロリストに娘をジャックされた平凡な父親デネヒーが、何から何まで戸惑いながらも、元、英国諜報員らの協力で無事に娘を取り返すまでの物語です。デネヒーの熱演と、奥さん役のジョアンナ・キャシディに注目の一編ですが、旦那がデネヒーでは、キャシディが持ち前のタフさを発揮するまでもなく、その点は残念。
ここらで、あまりパッとしない頃の単なるワル役ってのも紹介しておかなければ、名もすたるので。
獄中の長距離ランナー、ピーター・ストラウスを取り囲む人々の物語「ジェリコ・マイル」は、マイケル・マン監督のＴＶ映画ですが、役者が揃っているので見逃すてはないでしょう。コーチにエド・ローター、ドクターにジョフリー・ルイス、そして、ブライアン・デネヒーは白人系囚人グループのボス役で、肩いからせて凄んでいます。
「新・明日に向かって撃て！」では、サンダンス・キッド（ウィリアム・カット、ちなみに、ブッチは地味すぎて心配だったトム・ベレンジャーが扮しています）に一発撃ちこんだ執念深いアウトローを演じていますが、完全回復とはいかないキッドと決闘の末、撃ち殺されてしまいます。
こんな感じで、立派なガタイを生かして、単なる悪党からハードなタフガイにまでのし上がったデネヒーですが、検事補ハリソン・フォードの良き妻と思わせたボニー・ベデリアがゾッとするほど怖かった「推定無罪」の検事役では、最も心配された、知的で、一見、貫禄ありそうなデブという悲しいパターンでガックリ！
貫禄がある＝「太ること」というのは大変な間違いですから、くれぐれもその辺を勘違いしないようにと切に願うと共に、これからも、ハードさを全面に押し出したアクションもので、良い所を見せ続けて欲しいと思っています。
最後に一言、未見であることに何ひとつ罪悪感の無いデネヒー主演の「建築家の腹」については、志半ばで睡眠薬を盛られた気分の「英国式庭園殺人事件」での苦い経験から醒めきっていない私としては、同じピーター・グリナウェイ監督作品ということで、我が身を守るためにも、二度と近づかないようにと誓いました。
追加で。
ゴールディ・ホーンの巻き込まれ型サスペンス・コメディの傑作「ファール・プレイ」に、刑事チェビー・チェイスの相棒役で出演。セリフは少ないが、そのリアルな存在は、単なるドタバタ以上の魅力に溢れていたこの作品に必要だったはず。考えようによっては、この時の彼こそが、脇役としては最も素晴らかったと言えるかもしれない。
近作では、ジョン・カーペンター作品のリメークとなる「アサルト１３ 要塞警察」や、潜入捜査ものの「狼の街」に、けっこう重要な役で出演していました。 どちらも、こ難しいことさえ言わなければ十分に楽しめるデキです。