悪の世界で生きるハリー（ロバート・カルプ）が、相棒デブリンの黒こげ死体と対面！ 仇を討とうとデブリンの残した証拠を手にニューオーリンズへ。組合の長を隠れ蓑に犯罪組織のボスとなったシーガーを訪ねると、そこにはデブリンと組んでシーガーを強請っていた妻ロイス（ヴェラ・マイルズ）がいて、デブリンの代わりにシーガーから金を奪って、共に逃げようと誘うのだった。
我等のドン・シーゲル監督初期作品となる犯罪ものです。今となっては新鮮味には欠けますが、死んだはずの相棒デブリンが実は生きていて、ロイスと共にハリーを罠にかけるというというハードボイルドの常道をいく堂々の作品。ニューオーリンズまで共に旅をした少女セリンとハリーの仲もべったりしてなく、骨太を通してます。
内容とは別にちょっと儲けた気分だったのが、バーで生演奏しているのがゲッツ＆ジルベルトだったこと。イパネマ演奏してます。音楽担当のベニー・カーターの功績でしょうか？
長崎の漁村で孤独な日々を送る青年、清水祐一（妻夫木聡）は、出会い系サイトで知り合った石橋佳乃（満島ひかり）と会うことが唯一の心の慰めだったのだが、佳乃にバカにされ殺してしまう。事件が発覚するのを恐れて暮らす祐一に一通のメールが。それは、かつて出会い系でメールのやり取りをした馬込光代（深津絵里）からだった。
光代と出会い、初めて生きる喜びを知った祐一の自首を止めたのは、やはり孤独の中で生きてきた光代！そんな二人の逃亡劇を描いた作品です。自分勝手な祐一の母、祐一を結局は良いように利用する祖母、そんな祖母を騙すヤツ、佳乃を小バカにするエリート学生、その学生を殺そうと迫る佳乃の父親、光代のことより世間体な妹などの登場人物を通して、何が本当の悪なのかを問うているんですが、このテーマに対してあまりに執拗に迫り過ぎていて息苦しさを覚えました。その息苦しさを名作ゆえにと捉えられれば、絶賛なんでしょうけどね？ワタシは無理！妻夫木君、深津さんは悪くないけど、佳乃の父親やってるおっさんがねー、いつもながら演技し過ぎでクドイねー！なんかこの人が出てくるとがっかりなんだよね、まあ、監督に求められているんだろうから仕方ないっちゃあ、仕方ないんだけど。その点、エリート学生を演じた岡田将生君はいいですねー、憎たらしいんだけど、普通にそこらにいそうなんだよねー。
ある教会の庭に埋めておいた金を手にするために脱獄した老ギャング、ランベール（ジャン・ギャバン）とその相棒ピエール（ジャン＝クロード・ブリアリ）が、司教と神父に変装し、ローマ行きの飛行機に乗りこむのだが、あろうことかその機がハイジャックに・・・。
ハイジャック犯や空港関係者の緊張感に比べ、余裕たっぷりな二人をユーモラスに描いた犯罪コメディです。ハイジャック犯を手玉に取るランベール司教は貫禄満点！ ぶっきらぼうなユーモア感覚はギャバンならでは！ 飛行機で出会った元恋人（伯爵夫人になりあがっていた）との掛け合いも楽しいし、教会でのオチで、思わず悪態をついてしまうギャバンってのも笑えます。軽いタッチの割には見せ場の多い作品なんですが、これがギャバンの遺作なのでした。
雪降り積もるデトロイトの大晦日。年内で閉鎖となる13分署に大雪で護送困難となった囚人達が一時的に収容されることに。その囚人達の中に悪徳警官達とつるんでいた大物マリオン（ローレンス・フィッシュバーン）がいたことから、彼の口を塞ごうとする者達と分署での最後の夜を過ごす警官ジェイク（イーサン・ホーク）達の壮絶な攻防が繰り広げられるのだった。
一部カルト視する向きもあるジョン・カーペンターの「要塞警察」のリメーク作ですが、かなり拡大解釈されています。オリジナルは低予算そのもので雰囲気だけって感じが強かったので、手直しは当然でしょう。そのデキはと言えば、脚本に苦しいところ（あとからやって来た警官は白なのか黒なのか曖昧だし、そのわりには裏切りものが見え見えだし）もありですが、囚人達（ジョン・レグイザモが良い）にもそれぞれ見せ場が用意されているし、巻き込まれてしまうジェイク（潜入捜査で同僚二人を失った過去あり）のカウンセラー、アレックス（マリア・ベロ）の存在も印象的で、かなり楽しめました。全編暗がりの中でのアクションなので、ちょっと見づらかったのは残念ですが、なによりテンポ良く展開されているので上々！悪徳警官のトップにガブリエル・バーン、13分署のベテラン警官にブライアン・デネヒー。
パリに住むストリートアーティスト（壁などにスプレー絵画）のトニーは、一目惚れした看護婦のグロリアを追って、弟分の悪ガキ、ジョーキーと共に盗んだ車で南仏トゥールーズへ。途中、神秘の島を探し求める謎めいた老人（イヴ・モンタン）と出会い、共に旅するのだが・・・。
これを撮り終えた直後にモンタンが亡くなったこともあり、評価の高い作品ですが、老人の放浪の意味が見えてくるに従って、それほど深みのあるテーマではないことも知れてしまいます。なので、ジャン・ジャック・ベネックス監督ならではのケレンたっぷりな映像美、人物模写を楽しむべきでしょう。特に黒人少年ジョーキーの特異な存在が、この作品にファンタジーとしての味わいを持たせています。
故意に刑務所に入った強盗団が、看守や囚人たちがサッカー中継に夢中になっている隙に脱獄！試合終了までに造幣局へ侵入し、本物の紙幣を刷りあげて刑務所へ戻って来ようと企むのだが・・・。
教授（フィリップ・ノワレ）とジョルジュ（ロッサナ・ポデスタ）が降りて、メンバーが一新されたシリーズ3作目ですが、2人に負っていた上品さやお色気を抜きにしてこの楽しさはいったい何なんでしょうね！何度も見直しているのでチェックだけと思いながらも、すっかり通して見てしまいました。おふざけ映画と知りつつ、脱獄の計画を嗅ぎつけて強引に参加してきたコソ泥サムの厄介者ぶりにイライラさせられたのも、今となっては古き良き思い出であります。それにつけてもメゲない奴等よ！
エリートの兄とは違い、職を転々とする哲夫（永瀬正敏）が、亡き母の一周忌で故郷岩手へ。一人暮らしの父、照男（三國連太郎）とは、ぎくしゃくしたまま東京に戻った哲夫は、鉄工所の配達員として働き始めるのだが、そこで出会った聾唖の娘、征子（和久井映美）に恋心を抱くのだった。そんな時、照男が上京することに・・・。
てっきり征子との結婚を反対されると思っていた哲夫に、思いもよらない優しさを見せる照男という展開は、いかにも山田洋次ワールド！泣かせどころを心得ています。そんなハッピームードで終わらせることなく、雪深い岩手のがらんとした一軒家に戻った照男の底知れぬ孤独を描いて深みあり！椎名誠の「倉庫作業員」を元にした作品とのことです。
最愛の妻タネ（石原さとみ）を失った市（香取慎吾）は、タネとの約束を守り、争いごとに背を向けて生まれ故郷へ。友人で百姓の柳司（反町隆史）の元に身を寄せて農民として生きようとするのだが、村を支配している極悪非道な天道一家から村人たちを救うため、またしても仕込みを抜いてしまうのだった。
香取君が頑張って活劇しています。市の持つひょうきんな一面も出そうとしています。この世の虚しさも描こうとしています。その意欲は十分に伝わります。が、それらは勝新太郎の持つ下品さ、薄汚さ、生々しさがあってこそ、鮮やかに映し出されるものだったんですね。チカラの入った作品とは思いますが、「座頭市」は勝新の死と共にLASTを迎えていたんです。
バーニー・ロス（シルベスター・スタローン）率いる命知らずの傭兵部隊エクスベンダブルス（捨て石）に、南米のある島国を牛耳る独裁者ガルザ将軍を抹殺するという依頼が舞い込む！視察に向かったバーニーは、CIAの陰謀が絡んでいることを知り、降りようと思うのだが、民衆のために戦うサンドラと出会い、単身、島に向かうのだった。
サンドラがガルザ将軍の娘という設定のため、将軍を絶対悪とは出来ず、将軍を傀儡とし裏で手をまわす麻薬王（エリック・ロバーツ）が退治される役をおってます。ので、派手なアクションが繰り広げられるわりには巨悪を倒した感は無し！まあ、そこらにこだわるのは愚の骨頂でしょうが。お約束通り、銃でカタをつければ済む場面でも素手アクションが展開されてます。商売上手のスタローンが集めたのは、ジェイソン・ステイサム、ジェット・リー、ドルフ・ラングレン他。ミッキー・ローク、ブルース・ウィリス、アーノルド・シュワルツネッガーは名前を貸しただけ。
ニューヨークで暮らすカップル、フランス人フォトグラファー、マリオン（ジュリー・テルピー）と、アメリカ人インテリアデザイナー、ジャックがマリオンの故郷パリへ。フランス語が解らないジャックを待ち受けていたのは、ヒッピーなマリオンの両親と、次々と現れるマリオンの元彼達だった。
ラブコメと謳われてますが、どうしたってジャックの立場で見てしまうので、とてもじゃないが笑えません。なぜなら、マリオンの単なる「言い訳」が、ともかく圧倒的な自己肯定となってペラペラと繰り返されるんですから。それが、私が感じているフランス人への悪いイメージと重なってしまうんですから。がしかし、この作品、テルピー（フランス、パリ出身、ゴダール作品にも出演）が監督なんですね、なので自嘲とも取れるんです。そこらを思えば無意味な作品ではない気もするんですがねー、「好きか？」って聞かれたらノン！それではアデュー！アデュー！アデュー！
ブルックリンの犯罪多発地区が舞台。定年退職を一週間後にして、事なかれ主義を貫こうとするエディ（リチャード・ギア）、子沢山の上、喘息を患う妻のためにも良い環境への引っ越し資金を必要とするサル（イーサン・ホーク）、長く潜入捜査を続けたせいで、妻にも逃げられ精神的にも追い詰められているタンゴ（ドン・チードル）、という三人の警官に、なおも重くのしかかる現実を重厚なタッチで描いたポリス・ストーリー。
三人の警官が過酷な任務にもがき苦しむ姿に、下級の警官や、出世に縁のなかった警官がクリーンを通すことの難しさが描き出されています。「ザ・シューター/極大射程」等、アクションものには実績のあるアントワーン・フークワ監督が、意外にも（失礼）派手さを押さえ、じっくりしたタッチで犯罪社会の生々しさに迫っています。なので、ポップさを求めるとちょっとかわされるかも？ タンゴが潜入する組織のボスにウェズリー・スナイプス、サルの上司にウィル・パットン、その上の立場となる捜査官にエレン・バーキンと、なかなかのメンバーを揃えた渋好みの一編。
多くの負傷者、戦死者を目にしてきた軍医ウィル（サミュエル・Ｌ・ジャクソン）、輸送任務時に戦闘に巻き込まれ、片腕を失ったバネッサ（ジェシカ・ビール）、戦場で友人を失ったトミー、一般人を誤射したことがトラウマとなっているジャマール等、泥沼のイラクで心に深いキズを負った兵士たちの帰還後を描いたドラマ。
タイトルから戦争アクションを期待するとガッカリの真面目に戦争悲劇に向かいあった作品です。帰還兵と「戦争を知らない国民」とのギャップがダークなタッチで描かれていますが、この手のテーマを持った作品は、昔から数多く作られてきましたし、戦場に向かえば、誰しもが傷つくのは解りきっていること！それを承知で参戦した兵士達の悲劇を描くことで「反戦の意思」を伝えようというのは、どこか傲慢な気がしますね。作品のデキとは無関係な感想になってしまいました。
かつて強盗事件を起こしたロニー・バーネル（デニス・ホッパー）が30年ぶりに出所！出迎えたのは、ロニーを神格化している孫のマット。マットは父親で刑事のアーロン（ウィル・パットン）とは不仲で、アーロンも実の父ロニーよりも養子として育ててくれた警備会社経営するダリル（フレッド・ウォード）を信じていた。しかし、ロニーがダリルの裏の顔を暴く証拠を隠し持っていたことから、ロニーとマットに危険が及ぶと知ったアーロンは・・・。
ロニーもマットもカーマニアのスピード狂という設定からの邦題ですが、カーアクション自体にはさほどの迫力も無く、肝心のストーリーにも深みなしですから、そこらに王道を求めてはガッカリでしょう。ここでの決め手は、ホッパー、パットン、ウォードという夢のような組み合わせを楽しむことなんです。この3人の誰にも興味が無ければ、ただのB級アクションですから、見る意味無しでしょうね、きっと！ホッパーは、こんな人が祖父だったら大喜びなくらいタイトでカッコいいし、パットンも陰りを感じさせてくれてます。悪役だったウォードは、当然「お人好し感」無しなんですが、それはそれで悪くないです。これでTV映画なんですから、凄いですよー！アメリカは！
上司との意見の違いから離職した元FBIジャック（ディーン・ケイン）が乗り込んだ飛行機がテロリスト集団によってハイジャックされる。テロリスト達の要求は同士の解放だったが、真の狙いは他にあると気づいたジャックは、乗客やCAの協力を得、その目的を阻止しようとするのだった。
前後半2巻のTVドラマです。ダラダラと続くシリーズものには食指が動かないけど、ここらならテンポ良く楽しめるかと。さて、そのデキはといえば、脚本的にはそこそこ頑張っていて日本のドラマより数段レベルは上！なんですが、いかんせん金使ってないので迫力不足は否めず！多くを望まなければ十分なデキですけどね。航空会社に勤務するジャックの妻にリー・トンプソン、その上司にリチャード・ラウンドトゥリー。
頭の中を支配するココロの声のせいで、不眠、過食症に悩まされ、アルコールに依存するフリーライターの玲（寺島しのぶ）が、コンビニで見かけたフリーの長距離トラックドライバー（大森南朋）に声をかけ、道づれとなって新潟へと向かうロードムービー。
脱ぎっぷりのよさですっかり大女優の寺島しのぶが、その名を高めた作品のようですが、ものすごーく好意的に捉えれば、普通に生きることを拒否するもうひとりの自分に苦しめられる玲という人間の孤独を描いたものと言えるかもしれません。個人的には押し出しが強すぎて好きになれないでいる寺島さんなんですが、ここでは演技し過ぎ感が無く、サッパリ味で悪くないです。結局は役者の良い悪いのすべてが、監督の思い一つにかかっているってことなんでしょうね、きっと。
父の自殺未遂から歯車が狂いだした中原家。母は家を出て近所でひとり暮らしを始めるし、優秀だった兄は進学を拒否して農業にいそしむ毎日。そして、父親は「父さんをやめる」宣言。そんな中、高校受験を控える佐和子（北乃きい）は、陽気な転校生、大浦と出会い、家族よりも自分を守ってくれる人がいると思い始めるのだが・・・。
ネタばれなので書けませんが、佐和子と大浦君の関係は予想した通りの展開。その展開がいかにも安っぽい邦画ならではのありきたりなものなのでガックリ！それでも捨てきれないものが残ったのは、やはり他人である、兄のヘンな恋人、小林ヨシコ（さくら）が良い感じに描かれていたから。
家族と共にロンドンで休暇中のジャック・ライアン（ハリソン・フォード）が、IRAテロリストが皇室関係者ホームズ卿の車を襲撃する現場に遭遇！ ホームズ卿を救ったジャックだったが、襲撃に参加した若者バディを射殺してしまう。その場で逮捕されたバディの兄ショーン（ショーン・ビーン）は脱獄に成功し、執拗にライアン一家をつけ狙うのだった。
復讐に燃えるショーンと、正義のヒーロー、ジャック・ライアンの対決がメインになってしまい社会派サスペンスって感じは薄らいでますが、普通にアクションものと思えばそこそこには楽しめるデキ！がしかし、いくら盛り上げのためとはいえ、ライアン家を守るSPが弱過ぎ！それに比べてジャック・ライアンはスーパー過ぎ！結局は勧善懲悪なハリソン・フォードの一人舞台なのでした。
新年のカウントダウン・パーティまで2時間あまりに迫った高級ホテルを舞台に、そこで働く従業員と、その夜招かれた客たちが織りなすドタバタを描いた、いわゆる「グランドホテル」方式の人生喜劇。
正直なところ退屈でした。なぜなら、あまりに舞台的ですから。目の前で役者さん達のせめぎ合いが味わえる舞台と、そこらに距離感のある映画では見る側の感覚も違うはず！同じセリフでも舞台ほどには伝わってこないのは当然で、だからこそ、そこを補うのが映像のはず！残念ながら、そんな映像的魅力が感じられませんでした。