マンハッタン南の悪党どもも懐かしむ男
言わずと知れたマンハッタン南の鬼刑事役で日本でもビッグになりましたが、この「刑事コジャック」には、無名時代のスターがゾロゾロと出ているので、それだけでも十分楽しめるシリーズでした。
アメリカでは、映画とＴＶで随分「格」が違うみたいですが、どんなスターにも下積み時代があり、特に個性派といわれているスターの殆んどが、ＴＶで一度は悪役を演じていますから、好きなスターについても、この辺までつっこんで見ると楽しみも倍増するのではないでしょうか？
そんなわけで、「刑事コジャック」は殆んど録画してたのですが、テープダメージがヒドくなって見直せないのが残念でなりません。
ちなみに有名どころを簡単に書いておきます。リチャード・ギア、クリストファー・ウォーケン、ハーベイ・カイテル、ジェイムズ・ウッズ等々、詳しくは「刑事コジャック」にアクセスを。
ムービースターとしてのテリー・サヴァラスは、脇役として多くの出演作を持っていますが、戦争映画の大作「バルジ大作戦」の戦車隊軍曹役は、名だたるキャストの中でも、とても印象に残る役でした。
サヴァラスは戦いの合間にヤミ商売をして稼いでいる粗野な男で、商売の相棒として利用していたはずの女に「愛」をうち明けられて、初めて人としての優しさを見せるのですが、その女の人も戦争の犠牲となったのを知り、ドイツ軍への復讐に燃えるのでした。その執念ときたら凄まじく、戦車の屋根が吹っ飛ばされても、機関銃一本で立ち向かおうとする男を熱演しています。
同じ戦争モノでも、ロバート・アルドリッチ監督作品「特攻大作戦」でのサヴァラスはとんでもない役で、女を見るとおかしくなって絞め殺したくなる狂人でズラリ揃ったダーティなメンバーの中でも出色の怖さでした。
やはり戦争モノの「戦略大作戦」でも、クリント・イーストウッド、ドナルド・サザーランド等を相手に貫禄を見せてました。内容的には、戦いのどさくさに紛れて金塊を盗み出そうとする作品で、ユーモア感覚に溢れた楽しめる一編です。
サスペンスものの中では、チャールズ・ブロンソンがダンディズムをみせた「狼の挽歌」が有名ですが、ここはひねってピーター・デュフェル監督の「怪盗軍団」を紹介。
監獄に入っているナチの戦犯を誘拐して、「金塊」のありかを聞き出し盗み出すまでを描いたスリルとユーモアに溢れた作品で、次々に襲いくるピンチも度胸満点のサヴァラスにかかればちょろいもの、モチゾー一押しの作品です。共演にジェイムズ・メイソン、ロバート・カルブと渋め。
ロジャ・バディムの思わせぶりなだけってな感じの「課外授業」ではチョイ役の刑事でしたが、国際的スターが揃った「オフサイド７」では、ギリシャ系ハンサムとして堂々の存在を示しました。共演にデビッド・ニーブン、クラウディア・カルデナーレ、エリオット・グールド、ロジャー・ムーア。
ルックスがルックスだけに、ひとつ間違うとマンガチックになりかねないサヴァラスですが、ピーター・ハイアムズ監督の傑作「カプリコン・1」では、ふてぶてしくて抜け目のないパイロット役で出演。
商売用の複葉機を巧みに操り、軍用ヘリコプターをやっつけて、巨大な陰謀に巻き込まれた宇宙飛行士（ ジェイムズ・ブローリン ）を見事に救うのでした。金にはがめついが、料金分はしっかりやり通すプロならではの豪快さを見せてくれます。
主演の新聞記者にエリオット・グールド、手を貸すのがカレン・ブラック、そしてブローリンの妻にブレンダ・ヴァッカロと私の好きな俳優さんが揃ったなかなか味のアル作品でした。
ルックスが裏目に出た感じなのが、「ポセイドンアドベンチャー2」かもしれません。大スペクタクルものの続編なのに、脚本の甘さやスケールの無さでいきなりＢ級のりになってしまった作品ですが、テロリスト集団のボス役を演じたサヴァラスも、なまじの迫力にリアリティ無し！ まあ、それ以前の問題なんですが・・・・主演にマイケル・ケイン、ヒロインに困ったチャン時代のサリー・フィールド。
コジャックが復活したＴＶ版「刑事コジャック ベラルスファイル」は、マックス・フォン・シドー扮するユダヤ人が、自分の身を犠牲にしてまでもナチスの戦犯を追う、というシビアでスリリングな内容で、今更ながらアメリカＴＶ映画の奥の深さを思い知ると共に、圧力に屈せず正義を貫き通すタフガイ、サヴァラスに感動！
最後は、未見となる「現金お断り」にいつの日かたどり着くことを祈りつつ、天国に逝ってしまったテオ・コジャック、並びにスタブロス刑事（ 弟さんのジョージ・サバラス ）に乾杯し幕を閉じましょう。