核戦争後の文明が崩壊した世界。腐敗した人々による強奪、殺戮が続く中、人類の未来のために一冊の「本」を運ぶ男ウォーカー（デンゼル・ワシントン）と、その本を手にし世界支配を企てる男カーネギー（ゲーリー・オールドマン）の対決を描くアクション作。
本の正体は「聖書」だったという思い上がりもはなはだしい作品。アクション的には相も変わらず、強く正しく愛のあるデンゼルと、これまたいつもながらのオーバーアクションのゲーリーのそれぞれのファンなら十分楽しめるものかと？ マルカム・マクダウエル、トム・ウエイツと顔が凄い人出演。
実績あるCIA分析官イヴリン・ソルト（アンジェリーナ・ジョリー）が、ロシアからの亡命者の密告により、訪米中のロシア大統領暗殺を企てる二重スパイとの疑いかけられてしまう。誰にも信じてもらえなく拘束されてしまったソルトは逃亡を余儀なくされるのだった。
アンジェリーナがスーパーアクション連発！全編退屈させること無しのジェットコースターでした。主演がアンジェですからワルのはずがないと思いつつ、彼女がロシア大統領を殺してしまった時は、一瞬、「オッ」と思いましたね。ソルトは子供の頃からロシア過激組織によって育てられた生まれながらのスパイなのだった！とこれぐらいにしておきます。フィリップ・ノイス監督がCGに頼り過ぎることなく見せてくれました。
ワールドシリーズ優勝を目指すN.Yヤンキースのスカウトマン、アル（アルバート・ブルックス）は、スカウトした選手がさっぱりでメキシコの僻地担当にされた上、クビになってしまう。ところが、そこでとんでもないスピードボールを投げるスティーブ（ブレンダン・フレーザー）を発見！ 彼のマネージャーとしてヤンキースと交渉、高額で契約を結ぶのだが・・・。
野球バカのスティーブが子供の頃からのトラウマに悩まされていた！というコメディにあるまじき暗い影のある設定なんですが、それが完全裏目！ ハズレのないはずの野球コメディなのにまったく楽しめず、どよんとしたままエンディングを迎えてしまうのでした。どうしたんだ！ マイケル・リッチー！ 精神科医役ダイアン・ウィーストの扱いも中途半端だぞー。
両親に捨てられ、別々の里親に引き取られたドナルド、デビッド、キャロラインの兄弟が十数年後に再会を果たすまでの苦難の道のりを描いたハンカチムービー。
ハンカチムービーと書きましたが、法律の縛りで再会が認められない兄ドナルド（ティモシー・ハットン）の苦悩や、里親との確執、預けられた先の父親と仲が良過ぎたせいで母親の嫉妬に苦しめられるデビッド、里親に馴染めなくて家出しドラッグに手を出すキャロラインとただのお涙頂戴ものを超えて社会性あり！
里親探しをする養護センターの担当にブレンダ・ヴァッカロ、ドナルドの結婚相手ローズにロザンナ・アークエット。
ところで、ドナルドの里親の元に妹として引き取られてきたアンディ（アン・マクドナルド＝出演作はこれ一本のようです）は幸せになれたんでしょうかね？ ふてくされているけど、どこか寂しげな感じが印象深くて気になってなりません。
1920年代、ニューヨークの暗黒街が舞台。文無しのチンピラ、ソニー（ジュリアーノ・ジェンマ）は、八百長を断って職を失った覆面レスラーのチャーリー（バッド・スペンサー）と組んで大物ギャング、アンジェロの子分になり、一稼ぎしようと企むのだが・・・。
ギャング狩りに力を入れる議員を殴ってしまったり、借金取りに行った先があまりの貧しさだったため逆に食料を買ってやったりと、色男指数の高いジェンマがお間抜けなお人好しぶりを見せるコメディですが、正直、笑い爆発とはいきませんでした。クライマックスはギャング達とのドタバタ対決になりますが、スラップスティックにキメたつもりもいまいち！不発に終わってます。
13年ぶりに出所したマフィアの大物ディノ（ピーター・フォーク）が、愛人（ダイアン・ウィースト）との間に生まれた自由奔放でパンクな娘クッキー（エミリー・ロイド）に再会。二人の仲は険悪だったが仕事のないクッキーを運転手として雇うことに。入獄中の借りを取り返そうとするディノが、昔の仲間からうとまれ、命を狙われていることを知ったクッキーは、ある計画を思いつくのだが・・・。
序盤のディノとクッキーのせめぎ合いやクッキーがウデを見せるあたりは楽しめましたが、その後の展開には特に残るもの無しの平凡なコメディでした。ピーター・フォークは流石に味わいありなんですが、ロイドはキュートとまではいかず！ せっかくの起用となる愛人役のウィースト、本妻役のブレンダ・ヴァッカロにまったく冴えがなく残念！検事との取引を逆利用する「オチ」はまあまあかな。
ベトナム戦争末期に捕虜救出作戦に加わったブッカー（チャック・ノリス）は、何者かの裏切りにより多くの仲間を失い、帰国後は心の傷を抱えながらテストドライバーとして暮らしていた。それから5年後、作戦で生き残った5人が次々と謎の死を遂げたことから、事の真相に迫るのだが、当然、ブッカーにも殺し屋の手が迫っていた。
「ダーティハリー2」のテッド・ポスト監督作なので期待しましたが、その後にTV映画に戻ったこの監督らしく、スケール感には欠けるにしても手堅くまとめて楽しめるデキでした。いちおうミステリアスな部分も残しつつ展開されるし、ブッカーと寝る謎のジャーナリスト（アン・アーチャー）があっさり消されるあたりは迫力あり！ 個人的にはこのぐらいレベルのアクション作が大好きなんですが、CG全盛となったこの頃では誰もいじること無しでしょうね、それもやむ無し！
1959年、ハワイでの夏休みで出会った日本人ケンゾー（ユージ・オクモト）、アメリカ人のマイク、チャック等6人の若者たちのひと夏の経験を描いた青春もの。
酒を飲んでの水兵との喧嘩、ネイティブとのトラブルや恋、そして、命がけで大波に挑むことで深まる友情を描いた作品ですが、「ビッグ・ウエンズデイ」と「アメリカン・グラフィティ」を思いっきりB級のりに仕上げた感じで決して褒められたデキではありません。敗戦国である日本人と祖国アメリカのために戦った日系人、敵国だったアメリカ人との偏見や対立を描いて、いくらかでも深みを出そうとしていますが、いかんせん、ケンゾーの父（ショー・コスギ）のやることなすことヘンなニッポン人が、全てを台無しにしています。ここらを笑い飛ばさないことには、せっかくのサーフィン・シーンにもたどりつけないでしょう。
デザイナー八杉恭子（岡田茉莉子）のショーが行われている高級ホテルのエレベーターで黒人が「ストローハット」という言葉を残して死亡！ 胸にナイフが突き刺さっていたことから、殺人事件として棟居刑事（松田優作）等が捜査に乗り出すことに。その同じ夜、恭子の一人息子が車で人をはねた上、死体を海に投げ捨てていたのだった。
恭子の過去が黒人の死にリンクしていることをつきとめようとニューヨークへ渡る棟居刑事と、その棟居と組むことになる刑事ケン（ジョージ・ケネディ）との間にも深い因縁があった！という戦後の混乱期の暗い影を映し出したサスペンスです。金に糸目をつけないカドカワらしく豪華メンバーが揃っていて、意外な大物が小さな役で顔見世しているのが今となっては新鮮！ それだけでも退屈しませんでしたが、詰め込み過ぎの脚本は消化されてない気がするし、クライマックスの恭子の独白あたりからの芝居がかった展開の連続もいただけませんね。
私の中では歴代美女にランクインしているジャネットも出てまーす。
沼田家の次男、茂之（宮川一郎太）は優等生の兄とは正反対の落ちこぼれ受験生。そんな茂之を心配した父（伊丹十三）が新しい家庭教師に選んだのは吉本（松田優作）。 吉本は三流大学出だが独自のスパルタ式を敢行！手を出すこともある吉本にビビっていた茂之だったが、ケンカの仕方を教えてもらったことから次第に吉本に従うようになり、それにつれて成績も上がりだすのだが・・・。
これだけ読むと、熱血教師とそんな教師に出会って目覚める悪ガキというありきたりな図式のようですが、これがまったく異質な展開を見せるシュールな作品でした。 家族を装いながら実際にはまったく血の通っていない人間集団をある種スリラーとして描いていて、茂之が高校に合格してからはゾワッとする「こわさ」あり！
松田優作ならではの凄みとユーモアが生かされた作品で、優作抜きにしてこの成功はあり得なかったでしょう。
ドンの急死によりその縄張りをめぐり勃発するマフィア同士の抗争を描いたアクション作。ドンの息子のフランクは大御所アンジェロ（アンソニー・クイン）の預かりとなり、フランクの強力なブレーンだったビンス（アル・レティエリ＝75年に急逝）とトニー（フレデリック・フォレスト）は独立、対抗するジミー（投獄中）一家の幹部オランドも納得したはずだったが・・・。
オランドの罠にはまったアンジェロとフランクが全面対決となり、これを機に足を洗うはずだったトニーも否応なしに巻き込まれていくという展開ですが、リチャード・フライシャー監督が手堅くまとめて退屈することないデキ。マフィアものとしては無視に近い扱いですが、アクションファンなら必見でしょう。哀れな末路をたどるアンジェロを演じるクインの渋さはもちろん、存在するだけでハードさが演出されてしまうアル・レティエリが良いですねー、この人がいるだけでドキドキ感が生まれます。
アルカトラズ刑務所に送り込まれた囚人バーニー（デビッド・キャラダイン）は、周到な計画を練り仲間と共に脱獄を図るのだが、捕虜にした看守たちが外に出る鍵を隠したことから計画は狂っていくのだった。
囚人役にデビッド・モース、ジャン・マイケル・ヴィンセントと揃った脱獄ものなので期待大でしたが、やはり「脱獄もの」にはハズレ無し！ TV用なのでスケール感には欠けますが、仲間割れが始まってからは、同じ囚人でありながらその人間性の違いがあらわになっていく展開で十分見せるものあり！絵を描くのが趣味で暴力を嫌うバーニーと最後までバーニーを見捨てないマーブ（ここでも心優しさを見せるデビッド・モース）には心底逃げ切ってほしいと思いましたね。
第二次大戦中。アメリカから譲り受けたオンボロの駆逐艦に乗り込んだ艦長（トレバー・ハワード）率いる英国海兵の活躍を描いた戦争スペクタクル。このロートル船が思うように動いてくれないためトラブルばかりで、なかなか戦果があげられなかったのだが・・・。
スペクタクルと書きましたが、そこは時代もありますし、主に海兵たちの日々の生活や悩みごとが綴られています。爆撃で家族や結婚相手を失ったり、入隊したばかりの息子を失った艦長の悲しみ等に反戦意識を持たせたつもりでしょうが、そこらへんはありきたりなものでした。肝心のこの船の活躍についてはネタばれなので伏せておきますが、華々しく散ることになります。文句は多いけどガッツ溢れる海兵役で若き日のリチャード・アッテンボロー、なかなかおいしい役どころです。
悪には力で対抗し、街の平和を守ってきた元プロレスラーの保安官パッサー（ボー・スベンソン）の終わりなき戦いを描くシリーズ3作目。ギャングに妻を殺されて以来、ますます悪を憎む思いに駆られるパッサーは、時に行き過ぎた行為もあり、保安官選挙で落選。生活苦の状態だったが彼の活躍を映画にすることが決定！生活は潤うのだが、映画で悪役扱いされて商売が支障をきたしたことで、ギャングたちが動き出すのだった。
ジョー・ドン・ベイカー主演の1作目がマイナーヒットとなり、スベンソンで2、3作目と製作されたカントリー・アクションものの代表作と言ってもいい作品です。とは言っても分かりやすいB級アクションと思って臨んだ「1」は意外に真面目で重苦しい展開なのでちょっと見直す気にならないし、「2」は大昔にTVで見たきりなので調子の良い事は語れません。そんなわけで、期待と不安が入り混じった「3」ですが、これまた「B級なめんなよ」的心意気が伝わるデキで、痛快さを求めると打ちひしがれるかも知れません。悪を憎み正義を貫こうとする、心優しき保安官パッサー哀れ！
ジャック・スターレット監督には、ピーター・フォンダ、ウォーレン・オーツのロードホラー「悪魔の追跡」あり。それと、未見が情けない「ダイナマイト諜報機関/クレオパトラ危機突破」も。
刑務所慰問に訪れたカントリー歌手デュプリーが、自作の曲でデビューを夢見る囚人ボビー（ピーター・フォンダ）の作った曲「アウトローブルース」をパクリ大ヒット！ 仮出所したボビーは怒りの体でデュプリーに詰め寄るも、その時、拳銃が暴発！ デュプリーが負傷したため、ボビーは追われる身に・・・。
デュプリーのコーラスガールだったティナ（スーザン・セント・ジェイムズ）と出会ったボビーが、彼女のアイデアでレコードを出し、スターになるという、コメディタッチのカントリーアクションものですが、カーチェイスやボートを使った追跡シーンなどはけっこうスリリングで捨て難いものあり！ 「未来世界」でもフォンダと組んだリチャード・T・ヘフロン監督作品。 マット・クラークがまたまた小さな役で出演してます。
アイルランドの西にある孤島アランで暮らすタイガー一家の過酷なまでの生活をほとんどドキュメンタリーとして描いた作品。
やせた土地で自然と闘いながらも力強く生きる家族を描いた作品ですが、その道ではかなりの評価を受けているらしいです。映画を愛するあまりなんでしょう、やたら口うるさいおじさんに頼まれていたのを、ようやく見つけました。いっぱしに男としての心意気を見せようとする少年がとる「どうだ」ポーズが微笑ましく、この家族の強い絆を思わせます。サメ狩りシーンでは、一瞬、スピルバーグが影響を受けたのでは？と思うほどの迫力を感じたし、岩を砕くような荒波にもまれながら小舟を操り、陸を目指す男達は、心底、危険！見る価値ありの作品でした。
ウエズリー（ルイス・コリンズ）率いる傭兵部隊が、カーン将軍が組織する東南アジア麻薬ルートを粉砕するために命を賭ける痛快イタリア製アクション作。
この作品の最大の売りは、ヘリの操縦士のリー・ヴァン・クリーフ、プロの殺し屋のクラウス・キンスキー、そしてウエズリーをバックアップするアーネスト・ボーグナインという脇を固めるアクの強いスター達と、紅一点のジャーナリスト役ミムジー・ファーマーです。内容的には、派手に派手にとアクションを叩きこんで退屈させまいとの意欲は伝わるものの、脚本は穴だらけですので、おおらかな気持ちでこの豪華な役者陣の共演を楽しむことがなによりでしょう。特にミムジー・ファーマーは、ボーイッシュな魅力を失ってなくまだまだ健在。
クリスマスイブの夜に父親を惨殺されたロス市警のジョニー（ブラッド・ディビス）は、捜査からはずされ、酒びたり。そんな時に出会った秘密めいた女キャシー（シャロン・ストーン）を好きになってしまうのだが、ジョニーを待ちうけていたのは、かつての同僚でジョニーを逆恨みして父親を殺したアイザック（ジョナサン・バンクス）で、キャシーはアイザックが仕込んだ罠だった。
かつて、B級アクション道を極めようと意気込んでいた頃に見たこの作品を中古ビデオ屋で発見！ ジョナサン・バンクスの非道さが印象に残っていたので迷わず購入も、脚本が粗すぎて今となってはこれと言って見るべきもの無しの作品でしたね。こんな作品でも、なんか感じられた昔の自分ってなんだったんだろう？そんな複雑な思いにかられました。
ハンサムで仕事も出来るニール（ジェラルド・バトラー）は、美しい妻アビー（マリア・ベロ）と一人娘ソフィとの幸せな日々を送っていたが、ある日、ベビーシッターを雇い、二人で車で外出すると、車の中には見知らぬ男（ピアース・ブロスナン）が忍びこんでいた。男はベビーシッターと組んでソフィを誘拐！ ソフィの命と引き換えに無理難題を押し付けてくるのだった。
引き出させた現金に火をつけた男は、ニールの仕事相手にニールの悪行を暴いてみせ、ニールの生活をメチャメチャにしようとするのだが、はたして男のホントの狙いは？ これ以上はネタばれなので書けませんが、いろいろとつっこみ所ありにしても、テンポ良く展開されて退屈すること無しのサスペンスでした。ただ、謎の男に「怖さ」が板についてないブロスナン起用なので、「わけあり」が予想できてしまうのが残念！
就職に有利になると勧められ、漠然とバルセロナに留学したフランス人学生グザヴィエ（ロマン・デュリス）が、スペイン、イギリス、イタリア、デンマーク、ベルギーから来た学生たちと共にアパートで共同生活を送ることに。繊細でハジケていないグザヴィエが、異国で雑多な人種と暮らすことで成長する姿を描いた青春ものです。
レズの同居人に恋の手ほどきを受けたり、世話になっている人の奥さんと関係してしまったり、遠距離の恋人マルティーヌ（オドレイ・トトゥ）とうまくいかなくなったり、自己主張ばかりの同居人達と口論をくり返しながらも、そこに不思議な友情が芽生えたり、と青春ムービーのパターン通りですが、グザヴィエの押しの強くない性格が爽やかに映り、けっこう楽しめるデキとなってます。ただし、言葉もままならぬ状態で長期にわたりスペインを訪れたことのある人なら、それ以上にココロに伝わるものありでしょうね、きっと。
たった２時間で自国に戻れるフランス人であっても、言葉の壁やカルチャーギャップは襲い来るんですかね？ そこはグザヴィエだからなんでしょうかね？
流れ着いたヘルシンキで、暴漢たちに襲われ瀕死の状態となった男（マルック・ペルトラ）は、港湾で暮らす貧しい家族に助けられる。頭を殴られ記憶を失ってしまった男は、周囲の人々の優しさに触れ、救世軍で働くイルマ（カティ・オウティネン）と恋に落ち、次第に生きる気力を取り戻していくのだが・・・。
記憶喪失というベタな設定ながらも、そこはアキ・カウリスマキ！ 流石の世界観で素晴らしい作品に仕上げています。掃き溜めの世界で生きながらも他人に対する思いやりを失わない登場人物達との出会いには、「たかが映画」などと毒づくどころか、欲にまみれ、汚れきった我が心の浄化を心底願いましたぜ。とは言っても、けっして押しつけがましい作品ではなく、ユーモアもたっぷり！ なにしろ、これだけの内容を持ちながらも97分ですからね！ 見習えたまえ！ 殿様監督どもよ！
妻がいた事を知った男が、話をつけて再びイルマの元へ戻る列車で食すのは日本料理？ なぜか日本酒飲んで、箸、使ってます。「寿司」好きらしいカウリスマキの遊び心でしょう。
1962年、おかしな発明家カルヴィン（クリストファー・ウォーケン）は、キューバが核攻撃を仕掛けてきたと勘違いして、身重の妻ヘレン（シシー・スペイシック）を連れて自作の地下シェルター（35年後にしか開かないオートロック式）へ飛びこんでしまった。そして35年後、二人の間に生まれたアダム（ブレンダン・フレーダー）は初めて外の世界へ、イヴ（アリシア・シルヴァーストーン）という素敵な女性に恋するのだが・・・。
ほのぼのコメディをと思っての見直しでしたが、すっかりわかっていた展開なのに笑えます、楽しめます。支払いは全て、父親から貰ったベースボール・カード（ミッキー・マントルなんて１枚6000ドルもするんだから）でオーケーなのさ！ はじめはダサイ男扱いしていたイヴだったが、アダムの告白を聞いて、即刻、精神病院へ連絡！ 二人の恋も終わったのかと思いきや、アダムが使っていた歯磨き粉のデザインを見て追いかけるのだったよ！
笑えるネタ満載の隠れラブコメ名作と言っても過言じゃないかもね。
夫の暴力から逃れ、シカゴにやってきたケイト（ケリー・マクドナルド）が、見上げたビルの屋上から自殺しようとしている男に声をかけた事から始まる切ない恋愛ドラマ。ビルから立ち去った男ローガン（マイケル・キートン）は、向かいのビルのターゲットを射殺した暗殺者で、ケイトの口を塞ごうと近づいたものの、彼女の不思議な魅力に惹かれ、思いとどまるどころか親しくなるのだった。
虚しい人生を送るローガンと過去の苦しみから逃れられないでいるケイトが、多くを語ることなくお互いを思いやる姿を描いた淡い恋愛ものでした。てっきりサスペンスを期待しましたが、だからといって気落ちしなかったのは、そっち方面の作品として楽しめたから。ケイトに惹かれる刑事（アル中、離婚という暗い過去を持つ）の存在もポイントで、この刑事がローガンの正体に迫るも、やはりスリリングな展開とはならず！ともかくモテモテなケイトなんですが、それも納得な感じに描かれていて、小品ながら残るものありでしたね。
マイケル・キートン初監督作品とのことです。
1928年、チリの名家に生まれたクララ（メリル・ストリープ）は不思議な力を持っていたが、結婚目前だった姉の死を防げなかったショックから口を利かなくなっていた。月日が流れ、姉の婚約者だったエステバン（ジェレミー・アイアンズ）と再会、彼の求婚を受けるのだったが・・・。
ここまでなら、特殊能力者クララのその後かと興味も膨らんだんですが、金を掘り当て地主となった権力者エステバンと農民たちとの対決、二人の間に生まれた娘ブランカ（ウィノナ・ライダー）と農民たちのリーダー、ペドロ（アントニオ・バンデラス）との愛、それを憎むエステバン、と話は展開。その先が長くて、権力を維持したいがために政治家となったエステバンが、革命派に破れたと思ったら、軍事クーデターが起き、ペドロを匿うブランカがリンチされる、という激動のチリを舞台にした（苦手な）大河ドラマなのでした。いろいろと詰め込まれているのですが、正直、面倒くさかったです。
エステバンの姉にグレン・クローズ、エステバンがレイプした土地の娘との子供ガルシアにヴィンセント・ギャロ、娼婦役でマリア・コンチータ・アロンゾと分厚い布陣も、ストリープ＆クローズという（苦手な）二人がキツくて楽しめませんでした。
世界的数学者セルダム教授（ジョン・ハート）に憧れ、英国オックスフォードに留学したアメリカ人青年マーティン（イライジャ・ウッド）は、セルダムの古くからの友人であるイーグルトン夫人の家に下宿することに。ある日、下宿に戻ったマーティンは、夫人の下を訪れるセルダムと遭遇！共に夫人の部屋へ向かうと、な、なんと夫人は死んでいた！
二人の周辺で起きる連続殺人の謎を解こうとするセルダムとマーティンの推理合戦が思わぬ方向へと展開するサスペンスで、「数学は哲学」だとの見解に振り回されるのはマーティンばかりではなく、観客も。「数学は赤点」だという過去を持つワタシには、解ったような解らないような難解さ有りでしたが、単純過ぎるよりはずっと見る価値ありです。
舞台はイギリス。ロンドン警察への研修という表向きで観光を楽しむコロンボ（ピーター・フォーク）が、歴史ある豪邸を見学に行くと、前日、主人のサー・ロジャーが階段から落ちて事故死したことを知らされる。事故現場に不審を抱いたコロンボは、ロジャーが舞台「マクベス」のスポンサーであったことから捜査の的を絞るのだが・・・。
「マクベス」でカムバックを目論む俳優夫婦ニックとリリアン（リチャード・ベースハート、オナー・ブラックマン＝この二人のやたら大げさな演技はシェークスピア俳優という設定からくるもんなんでしょうね）が犯人なんですが、先手先手とコロンボの捜査を阻んで見せ場はたっぷり！ 蝋人形館に寄贈される証拠の傘を巡ってのコロンボのはったりには、流石の演技派俳優もギブアップでした。犯罪がバレて正気を失うニックの様は、いったい舞台なのか現実なのか？ ストーリーを超えて見せるものあり！
空港でロスバケしたコロンボが、そのヨレヨレ具合からか係員にスリ呼ばわれされてます。