さらば青春！サーファーボーイ、リロイは何処へ？
タイトルからして安っぽすぎた「サンダーブラスト／地上最後の戦車」、「地獄の戦闘艇バラクーダ」でのガラにもないタフガイぶりは、Ｂ級ファンを唸らせるどころか、ハードさもシャープさも中途半端な冴えないものでした。 そもそも、自分の骨を外してまでウケ狙いに徹するメル・ギブソンに渡り合うだけのパワーなんか無いのですから、「リーサル・ウエポン」の銀髪の殺し屋役からして無理があったような気がします。 私としては、一見怖そうな目の奥にある弱々しさがの憎めないところだと思うのですが。
事あるごとにタカ派だ好戦的だと良識ある人達にたたかれているジョン・ミリアス監督が描いたセンチメンタルが、主役三人の魅力で嫌味にならずにすんだ「ビッグ・ウエンズデー」でのユーモラスなリロイ役が忘れられないところですが、ここではウール・グロスバード監督の傑作「ストレート・タイム」でみせた、情け無いゲーリー・ビジーに触れておきましょう。
宝石店のタタキをする仲間を運ぶドライバーなのに、車で待っているうちに怖くなって家に逃げ帰るという悪党の風上にも置けない情け無さでしたが、図体がでかいだけに、小心者ぶりが余計に強調されていました。
結局、逃げ遅れた相棒のハリー・ディーン・スタントンを失って完全にキレてしまったリーダーのダスティン・ホフマン（ 「ファミリー・ビジネス」でも、目つきが変わったと思った瞬間にはケリを入れて凄んでいる迫力には、これがあの「卒業」や「ジョンとメリー」と同じホフマンなのかと我が目を疑うほどでしたが、この作品における彼の凄みはあんなもんじゃないんです。）に殺されるのですが、ホフマンの怖さを倍増させるに十分な対称でした。 ここでは、こすっからい保護観察官を演じて、見ているこっちまでカッカさせられたＭ・エメット・ウォルシュの好演も見逃せないところですが、我慢の限界にきたホフマンに、パンツを脱がされてハイウェイに置き去りにされるシーンには溜飲が下がりました。
話しはどんどん脱線していきますが、どうしてももう一人触れざるを得ないのが、孤独な犯罪者ホフマンに唯一やすらぎを与えてくれるテレサ・ラッセルです。どこか投げやりで自虐的ながらも「女の強さ」をうまく出していました。
その他にも「激走５００キロ」、「Ｄ・Ｃキャブ」、アラン・スミシー名義（ スチュワート・ローゼンバーグ監督がトラブったらしい ）の、人質になった友達を救いに行く素人部隊を描いた「ハリー奪還」、彼の抑えたベテラン刑事役はとても良かったけれど、キャサリン・ビグロー監督ならではの脚本ハチャメチャ、盛り上がればそれで満足とばかりに、人気のキアヌー・リーブスがサーフィンにスカイダイブにと大騒ぎの「ハートブルー」、 精一杯ワルぶったけれど、トミー・リー・ジョーンズのワンマンショーの前では影が薄かった、「沈黙の戦艦」などのアクションものを中心に出まくっています。
ガタイのわりに押しだしが弱いせいか、食われることはあってもなかなか主役を食うことが出来ないゲーリーですが、トム・クルーズが走りまわった「ザ・ファーム／法律事務所」では、闇の世界に精通する私立探偵役で出演していました。 窮地にたったクルーズが、兄のツテを頼って訪ねてきたので、てっきり、これから大活躍かと期待したのですが、残念ながらあっさりとバラされてガックリ！生き残った秘書兼愛人役のホリー・ハンターが、トンマなふりして抜け目無く、気弱に見せて案外タフなハードボイルド的心意気をみせたせいもあり、オイシイ役かと思われたゲーリーは、すっかり、かすんでしまいました。 なお、ジーン・ハックマン、エド・ハリス、ハル・ホルブルック、ウィルフォード・ブリムリー等々、オールスターキャストで描かれたこの作品でも、私としてはクルーズの兄貴役だったデビッド・ストロザーンに注目。
このまま幕を閉じてはあまりにも悲観的ゲーリー・ビジー論となってしまい、「ビッグ・ウエンズデイ」を永遠のバイブルとして生き続けていくだろう、数少ないシンプルな方々に囲まれてしまいそうなので、ちょっとイカしたゲーリーも紹介しておきましょう。 その前にかつてのサーフィン仲間ジャン・マイケル・ビンセントについては当然コーナーを用意することを誓い、ウィリアム・カットについてはその限りではないことを申し述べておきます。
内容的にはとても自信を持ってお薦め出来る作品ではありませんが、「ストリート・オブ・ファイア」以来、１０数年Ｂ級ヒーローを演じ続けているマイケル・パレとの「ザ・ウォリアーズ」では、罪無き民間人を殺してしまったトラウマにさいなまれている特殊部隊長を静かに演じて、部下だったパレをしのぎきりました。
もう一本は、「ホーム・アローン」のおふざけ演技が過少評価の因とも思われそうなダニエル・スターンが監督に挑戦し、自身も死球後遺症で壊れているコーチ役をノビノビ楽しんでいる「がんばれルーキー」です。 ゲーリー・ビジーは骨折した腕だか骨だかがどうにかなっちゃって、直ったとたん超速球が放れるようになった小学生のメジャーリーガーを、公私共に面倒みるはめになる引退間近のロートルピッチャー役で、ここでの彼はニック・ノルティ的タフさと、持ち味である控えめなユーモア（最近のトミー・リー・ジョーンズにはぜひとも見習ってほしい）と、優しさで確実に大人が見るに耐えうる作品にしています。
数限りない出演作を持つゲーリー・ビジーですが、最後に未見であることが後ろめたい「バディ・ホリー・ストーリー」での評価の高さを気にかけながら、彼自身も「カープ」なるＢ級ロックバンドのメンバーだったことを伝えて終りにします。