名うてのユダヤハンターであるナチ親衛隊ハンス大佐（クリストフ・ヴァルツ）と、ナチ狩りに命をかけるアルド中尉（ブラッド・ピット）率いるユダヤ人部隊バスターズの対決を描いた痛快作。 かつて、ハンス大佐によって家族を皆殺しにされたシャシャナはフランスの映画館主におさまっていたが、侵攻を続けるドイツ軍がその映画館で兵士達の活躍を描く作品を上映することに。アルド達とシャシャナにとっては、ナチの大物を一網打尽にするチャンスだったが、さすがにハンス！計画を見逃すはずもなかった。
久々に爆発しましたぜ！ザ・タランティーノ・ワールド！彼のB級映画に対する深い深い愛情が詰め込まれてます。 彼の持つ遊び心が溢れていて、突然、バーンと「HUGO」のクレジットが画面いっぱいに飛び出した時には、もうすっかり彼の世界に引き込まれてました。 準主役級が出し惜しみすることなく殺されていく展開も衝撃的！あれほどまでに狡猾なハンスが「なぜ」と思わせるラストも考え過ぎずに楽しみましょうぜ！
いじめが原因で高校中退して以来ニートだったマ男（小池徹平）は、母の死をきっかけにプログラマーの資格を取って小さなIT企業に就職するのだが、そこは、どなりちらしてばかりのリーダー（品庄の品川祐）を筆頭に、人間関係最悪の上、残業、徹夜は当たり前の、いわゆる「ブラック会社」だった。
徹夜続きでぶっ倒れる寸前のマ男だったが、社内で唯一、あたたかく接してくれる藤田（田辺誠一）との出会いによって、仕事を続ける勇気を得るというヒューマンコメディです。 見終わってみれば、なんと言うことのない作品なんですが、ほとんどラストまで延々と続いたマ男の苦しみにはついつい引き込まれるものあり。 小池の持つ線の細さが作品にあっていたのも良かったのでしょう。
クォーターバックとしてスーパーボール出場が決まっていたジョー（ウォーレン・ビーティ）が事故で天国へ。 ところが、天国への案内人の手違いで、まだ50年は生きられると知らされ、地上に戻ると葬儀は終わっていた。 一時的に、妻（ダイアン・キャノン）とその愛人（チャールズ・グローディン）に殺されることになる富豪ファーンズワースの身体を借りることになったジョーの人生は・・・。
ファーンズワースとなったジョーが巻き起こす行動を、明るく楽しく爽やかに描いたファンタジーです。 富豪の地位を生かして、フットボールチームを買い取り、選手としてのテストをうけたり、重役会議にマスコミ連中を参加させ、公害問題にかかわる自分の会社を撤退させることで逆にイメージアップに成功したり、公害反対派ベティ（ジュリー・クリスティ）との恋に落ちたり、あいかわらず、妻たちには命を狙われ続けたりで見せ場たっぷり！ほのぼのしたラストは今でも深く心に残ってます。
戦後混乱期のある村。 小学校教師、佐田（倍賞美津子）のもとに、教え子の大津（インパルス板倉）がやってきて偽札作りに参加しないかと言う。 当然、相手にしなかったのだが、翌日は、同じ用件で村でも信頼の厚い元軍人の戸浦（段田安則）がやって来た。貧しさのために進学をあきらめる村の子供たちを思い、ついには資金調達係として参加する事を決めたのだが・・・。
村中を巻き込んでの偽札作りを企んだ者たちの姿をユーモラスなタッチで描いたキム兄（木村祐一＝自身も犯人の一人、写真館のオヤジ役で出演）初長編監督作品。良くも悪くも、映画より笑いの方が上なんだと思わせたい松本人志作品のような「けれん」が一切なく、こじんまりした解かりやすい作品になってます。 ドカンとはこなくてもジワジワと染み込む感じはキム兄の芸風とマッチ。 ちょっとした社会批判を笑いに包んで見せるラストはカラッとしていて悪くない気がしました。
一見、クラスメイトという以外接点のない二人、リッチでハンサムな人気者リチャード（ライアン・ゴズリング）と頭脳明晰だが気弱でさえないジャスティン（マイケル・ピット）が、手を組んで完全犯罪を実行！捜査にあたるキャシー（サンドラ・ブロック）が二人に疑いの目を向けた時、容疑者の一人だったレイが自殺！事件は解決を思わせたのだが・・・。
「真の自由行為は犯罪」という哲学を証明するために実行した二人の仲間割れへの展開が平凡過ぎて、見ていて情けない気分。「完全犯罪をなめんなよー」とアクション馬鹿叫ぶ！とはいえ、二転三転するのでそれなりにはスリルあり！
キャシーのトラウマを事件にリンクさせなかったのが意外で、個人的には取ってつけたウソ臭さがなく良かったんだけど、そうまでしてトラウマ部分が必要だったのかという疑問も。サンドラが製作にも参加のようなんで、女性の自立を訴えたい彼女の意向なのかも？とすれば、そんな自己主張は邪魔くさいなー。
優秀な軍歴を持つルーク（キューバ・グッデンJr）が、身重の妻と車で移動中に追突事故にあい、妻とおなかの子は死亡！最先端の医療技術を誇るホープ社によって命をとりとめたルークだったが、チップを埋められ人体実験に利用されるのだった。
ホープ社の陰謀を暴こうとする四人組の組織によって、追突事故さえ計画されたものだと知らされたルークが、その四人と共に反撃に出るという近未来SFサスペンスです。ホープ社のトップにヴァル・キルマー、組織のリーダーにマイケル・アイアンサイドというB級ものにしては豪華なメンツに淡い期待でしたが、組織のハッカーがルークの脳に情報を送り込むあたりのSF的ウソには馴染めたものの、いかんせん低予算のためアクション部分があまりに迫力不足！誰にも相手にされずに消え去るのもやむなしでしょう。
1942年、日本軍がたてこもるガダルカナル島に上陸したアメリカ陸軍C中隊の戦いを描いた、テレンス・マリック20年ぶりとなる作品。
C中隊に属する、無許可離隊を繰り返すウィット二等兵（ジム・カヴィーゼル）、そんなウィットを見捨てることができないでいるウェルシュ曹長（ショーン・ペン）等の独白によって進められる展開は過去2作のマリック作品同様で、良く言えば俯瞰でクール、悪く言えばココロにグサリと突き刺さるものなし。 がしかし、そこはさすがに戦争もの、作戦成功のために強引な突撃命令を出すトール中佐（ニック・ノルティ）、部下を無駄死にさせることをことができず、そんな中佐の命令を拒否する中隊長の姿には伝わるものあり。
良質とされる戦争映画のほとんどが、「悲劇」か「さが」として描かれてきましたが、マリック流は一味違っていることは確か、それを言葉に表すのは難しいんですけど。
兵士役でジョン・C・ライリー、エイドリアン・ブロディ、ジョン・キューザック、その他大物がいっぱい。
投資会社で働く普通の男、ニック・ヒューム（ケビン・ベーコン）は、愛する息子を目の前で殺されてしまう。 犯人は逮捕されたものの、裁判で重刑にするのは不可能だと知ったニックは、目撃証言を翻し、自らの手で復讐を決行するのだが・・・。
ギャング団の度胸試しの犠牲になった息子の復讐をなしたニックが、今度はギャング団に狙われ、妻や次男まで失ってしまうという復讐の連鎖を描いた作品で、原作は「狼よさらば」のブライアン・ガーフィールド。 監督が「ソウ」シリーズのジェイムス・ワンなので、銃撃戦はかなりのエグさでR指定。 復讐鬼となったニックとやはり復讐のために全てをかけるギャング団のリーダーの間に「同じ色の血」が流れているというテーマはありがちなもので、さすがのケビン・ベーコンをもってしても、「ハイテンポで血なまぐさいハードアクション」以上のものは感じ取れず。
武器の密売屋ジョン・グッドマンが怖かったよー。
謎の連続殺人事件が発生！ チェスの棋譜を残していく犯人の次の狙いは「東京シティマラソン」だと推理した右京（水谷豊）が動き出すのだが・・・。
人気TVの映画化ですが、よほどスケールアップしない限り楽しめないでしょう！ そんな右京ファンでもなんでもない者の危惧に対する回答は「社会派サスペンス」として重厚さを持たせること。 ところがこれがまた、うすっぺら。 水谷のキャラもTVで十分なものでしょう。 日本を代表する大物俳優を揃えて大作ぶってますが、真犯人として絡むオッサンが、いつもながらクドイことクドイこと。 この人が出てくるだけでガッカリなんだよねー。
真面目で優秀すぎるがゆえに同僚たちの反感を買い、ロンドンからのどかな田舎町サンドフォードへ転勤させられた警察官エンジェル（サイモン・ペッグ）。 そんなエンジェルを待ち受けていたのは、巧妙に事故を装った連続殺人事件だったあー。
口コミから劇場公開となり、マイナーヒットしたことで話題のスーパー・アクション・コメディ。 コメディなのにR−15指定なのは、殺され方がえげつないからで、ここらに食いついた人も多かったのでは？ 相棒となる署長の息子ダニーが警官映画おたくで、飛び出す「セリフ」には笑えるし、ポリス・アクションもののパロディも満載！黒マントで逃げ足速し！の殺人犯は「クリムゾン・リバー2黙示録の天使たち」かな？そんな「くすぐり」たっぷりの作品ですが、おふざけの中に一本しっかりした芯が感じられる脚本にも感心！
小さな田舎町が舞台。町のみんなに慕われている心優しい青年ラース（ライアン・ゴズリング）は、シャイで純粋すぎるがゆえにか、女の子と話すことすらできないまま28歳に。そんなラースが、ある日、兄夫婦に彼女を紹介すると言って連れてきたのは、な、なんと等身大のリアルドール「ビアンカ」だった。
人形を恋人と思い込むラースの妄想に付きあうこととなる兄夫婦、医師（パトリシア・クラークソン）、ラースに好意を持つ職場仲間のマーゴ、そして、町の人々の姿を描いたほのぼのヒューマンドラマです。 ラースの妄想の因となるトラウマ部分に深入りしなかったのが良かったのでしょう、親しみやすいデキに仕上がっていて、奇しくも同じようなテイストだった「空気人形」よりもずっと楽しめました。
世間体ばかり気にして排他的なニッポンの田舎では思いつきもしない展開ですが、この町の人達が教会に通うことで「許す」というココロを持ち合わせたのだとしたら、宗教にも存在意味をもてるんですけどね。
強引な捜査で謹慎中の刑事マット（ジェラール・ドパルデュー）のもとに相棒だった麻薬課刑事フランクの死体が運び込まれる。 前日、フランクに呼び出され、麻薬組織相手の汚い仕事の手伝いを頼まれていたマットは、フランクの残した台帳を手にしたことから、否応なしに事件に巻き込まれるのだった。
「あるいは裏切りという名の犬」から続く文学的はったりを噛ましたタイトルでリリースされるフレンチ・サスペンスはどうしたって見てしまいますが、ここでの主役は、個人的には「ぶち壊し屋」と思っているドパルデューなので期待薄。 簡単に言ってしまえば、巨大犯罪組織、そして、組織につながる内部裏切り者と対決する暴走刑事というありがちなもので、裏切り者が誰なのかもバレバレだし、やたらと美女たちにモテモテのドパルデューというのも、嘘くさすぎて許しがたし！このモテモテが、ただのロマンスではなく、事件のキーになっているからなおさらのこと。 ただし、そこらを差し引けば、多彩な登場人物の説明不足や強引な展開に難ありとしても、それなりに凝った脚本にささえられた見せ場の多い作品と言えるかも。
繁栄の中に大事なものを失ってしまったアメリカに背を向け、南アメリカの未開地に入り込み、先住民たちと共同で楽園を作り出そうした男アリー・フォックス（ハリソン・フォード）とその家族の物語。 豊富な知識を生かしたアリーが巨大な製氷機を作り、先住民たちの暮らしに革命が起こったのも束の間、銃を持った流れ者たちがやって来て・・・。
未開の地で製氷機を作り出すまでは、痛快アドベンチャー・ファミリー乗りでしたが、その後は、頑なに文明批判し、とりつかれたようにジャングルの奥深くを目指そうとするアリーと耐え切れず都会へ戻ることを願う家族の葛藤を描いて、ズシリと重い人間ドラマとなっとります。 無神論者のアリーと伝道のためにやって来た牧師との対決にも見るべきものあり。 強烈なキリスト教批判となっとります。
かつて人気グループの一員としてヒットを飛ばしたミュージシャン花火（山崎まさよし）は、曲が書けなくなり田舎でキャベツ作りをして暮らしていた。 そんなある日、「ヒバナ」と名乗る、どこか淋しげな少女と出会い、共同生活を始めることになるのだが・・・。
書いてしまいますが、謎めいた登場をする少女がゴーストだったというファンタジーでした。 淡く、切ないひと夏の体験を描いたつもりなんでしょうが、肝心の「せつなさ」を感じとれなかったためか、正直退屈。 主演の山崎まさよしは、木村拓哉ばりのクールさ、キザっぽさ発揮でファンならさぞかし満足でしょうが、あの情熱的なヴィブラートが苦手なので、個人的にはまったく良いとこ無しの作品でした。
ナチス・ドイツ占領下のパリで散髪屋を営んでいたジョフォー家にも、ユダヤ人狩りの危機が迫っていた。 12才のモーリスと10才のジョセフは、二人きりで非占領地域へと旅立つことになるのだが・・・。
幼い二人の目を通して、ユダヤ人迫害からパリ開放までの辛く悲しい歴史の断片を描いた作品ですが、子供の持つ「残酷さ」を意識的に反映させたものなのか、怖いほどにクールな視線が印象的。 一見、ロマンティックな邦題ですが、子供を使った安っぽい「泣かせ」はいっさい無し。
列車内での検閲を逃れるため、隣り合わせた神父に頼み込んで連れにしてもらったり、見ず知らずのおっさんに、突然話しかけて親子のふりをしたり、ユダヤ人脱出を手伝い金を稼いだり、鶏を盗んで丸焼きにして食ったり、金を払って娼婦のオッパイを触ったり等々、幼い二人が随所に見せるしたたかさ、生命力の強さはあきらかに作品的にやり過ぎと思いつつも、うらやましい限り。 ジャック・ドワイヨン監督作品。
二浪の末、ようやく京都大学に合格した安倍（山田孝之）が、一目惚れしてしまった美女、早良（芦名星）を追って「京大清竜会」というなんやら怪しいサークルに入会したことから始まる珍騒動を描いた青春コメディ。
このサークルが行う「ホルモー」というのは、オニ語を駆使してサイズ30センチ、100匹のオニに指令を発し、相手のオニ軍を全滅させるまで戦う、というそれなりの歴史を持った大変なゲーム。 ここらを笑ってしまうセンスがないと、くだらなさとの戦いになること必死でしょう。 こちとら、特撮使用のオニ合戦のバカバカしさには気力も失せましたが、発想自体はある意味斬新。 青春ものとして見てみれば、有りがちな展開ながらも同じサークルの冴えない女子、楠木（栗山千明）の安倍への思いをカラッと描いていてそれなり。
共同経営者だった義父の借金に追われる歯科医オズ（マシュー・ペリー）は、妻ソフィ（ロザンナ・アークエット）との仲もすっかり冷え切り、お互いの生命保険を狙うほど。そんなある日、マフィアに懸賞金をかけられている伝説のヒットマン、ジミー（ブルース・ウィリス）が隣に引っ越してきた。 ソフィはジミーを売って懸賞金をもらうようにオズをそそのかす一方で、ジミーにオズを消すように頼むのだった。
ブラックな味わいの中に、オズとジミーの不思議な友情や、オズとジミーの妻との危険な純愛を描いたコメディです。 次から次と殺し屋どもの登場も、全体にテンポ良く展開されるので退屈することなし。なにより、ベタなギャグが少ないので、笑いのツボの違いに悩まされずにすんだのは救い。
刑務所を出たばかりのパイク（ヴィング・レイムス）は、出迎えてくれたクレーン（フォレスト・ウィテカー）の誘いに乗り、チノ（ジョン・レグイザモ）、ブッカー（ドニー・ウォールバーグ）、ホップス（デビッド・カルーソ）等と共に美術館から絵画を盗み出す計画に加わるのだが・・・。 チノがドジを踏んだため、クレーンが撃たれ、逃げ延びた四人は仲介人の下へ絵を届けるため車に乗り込むのだった。
凝ったつもりなんだろうけど、美術館での強奪シーンや銃撃シーンを随所に挿入させたためテンポがいまいち良くないのが残念。 チノとホップスの仲たがいから崩壊に向かうというのも在りがちな展開ですが、なにしろ、チノ役のレグイザモのイカレ具合がサイコーだし、カルーソのクールさも魅力ありなので見逃せませんて。 道中で拾うことになる女ナタリー役のリンダ・フィオレンティーノが、これまた約束どおりの悪女ぶり発揮なんですが、ナタリーの登場は、ストーリー的に大風呂敷を広げ過ぎの感じでリアルティを失ったかも。
それにしたってこのメンツは凄すぎだよー！
カリフォルニアで自動車学校の教官をしている海兵隊上がりの飲んだくれ中年ラファティ（アラン・アーキン）が、ひょんなことで知り合った留置場を出たばかりの二人、いつも不機嫌でふてくされてばかりのフリスビー（マッケンジー・フィリップス）、歌手になる夢を捨てきれないでいるマック（サリー・ケラーマン）と共におんぼろ車に乗り込みニューオリンズを目指すロードムービー。
どうにも時代がかった邦題にはがっかりですが、あなどるなかれ毒舌ワルゾーにとっては甘酸っぱい青春の一本。なにしろ、これ一本ですっかりアラン・アーキンのファンになってしまったんですから。
はすっぱだけど孤独を抱えるフリスビー、ラファティの思いを知りながら、カントリーシンガーと共に去っていくマック、そして、マックに去られた空虚さを振り払い、フリスビーに救いの手を差し伸べる心優しいラファティの姿を、当時は佳作連発のディック・リチャーズがさらりとしたユーモアで包み込んで見せた作品です。まあ、今となっては甘っちょろい人間ドラマの域を出てない気もしますが、あの時代ならではの空気感が伝わる思い出の一編なんです。 フリスビーにカモられるハスラーにハリー・ディーン・スタントン、やはり金を騙し取られる兵隊さんにチャールズ・マーティン・スミスと何から何まで魅力的なんです。と熱いのです。
1863年、イギリス植民地カナダ。 アデル・ユゴー（イザベル・アジャーニ）は、恋に落ちたイギリス軍中尉ビンソンを追ってこの土地までやってきたのだが、ビンソンのアデルへの思いはすでに冷えきっていた。 あきらめきれないアデルは、あれこれ手を尽くしてビンソンの愛を取り戻そうとするのだが・・・。
トリフォーならではの格調高き映像美がなければ、ただのストーカーものと紙一重かも？偉大な？詩人ヴィクトル・ユゴーを父とするゆえにか、屈折したプライドと自己愛をビンソンへの愛にすり替え、狂気の世界へと突っ走る「アデルの恋」に、果たして文学的深みを読み取れず。 いかに芸術的であろうとも、ねちっこいのは苦手です。
朝から猛暑のL.A.。 大渋滞にむかついて高速道路に車を乗り捨てて歩き出したビル（マイケル・ダグラス）は、面会禁止となっている別れた妻に電話するため、コンビニで両替を頼むのだが、邪険にされて苛立ちがピークに。 店で大暴れしたビルは、その後も妻（バーバラ・ハーシー）と娘に会うために歩き続けるのだが、途中、絡んできたチンピラから銃を奪ったことから、事件は大事に・・・。
次第にエキサイトし、ついには殺人までも犯してしまうビルの姿には、常人と狂人のボーダーはどこ？と思わせるものあり。 そこらを評価する向きもありでしょうが、この作品にブラックユーモア的な面白みを持たせているのがビルを追うことになる刑事（ロバート・デュヴォル）の存在。この日で退職のこの刑事と神経症の妻、偉そうな上司、唯一、信頼する相棒（レイチェル・ティコティン）との関係が丁寧に描かれているため、キレたおっさんの殺人沙汰以上のものあり。ホントの狂人（ネオナチの差別主義者で武器マニア＝フレデリック・フォレスト）を出したのも意味ありでしょう。
麻薬取締局が極秘作戦に利用したダミー会社にプールされた96億ドルに目をつけたガブリエル（ジョン・トラヴォルタ）の強奪計画を描いたアクション作。
次から次の意表をつく展開も、あきらかに「なんかおかしい」の連続！ それでも、つっこむ暇も与えないほどスピーディなので退屈しませんでした。ただし、一度でも疑問点にこだわったら、もうバカバカしくて見てられないかもね。 例えば、身体に爆弾を巻きつけた人質たちと共に乗り込んだバスをヘリで吊り上げて、ビルの屋上まで運び、そこに用意していたもう一台のヘリに乗り移って脱出って、なんか変ですよね？ そのヘリも、娘を人質に取られて無理やり協力させられるハッカーのスタンリー（ヒュー・ジャックマン）にバズーカ砲で・・・。 おおっと、これ以上は書きませんが、個人的には悪党ガブリエルを主人公にした悪漢小説と解釈して楽しみましたけど。
自主制作で映画界を目指しているオーウェンは、別居中の妻や娘との約束も平気ですっとばすアル中のバンドマン、レイの誘いを断りきれず、乱チキパーティに参加。 それが、婚約中の恋人にばれ婚約は破棄！ 傷心のオーウェンは恋人と行くはずだったショートフィルムフェスにレイを連れて行くのだが、例によって酒に溺れたレイは悪行三昧、ついにキレたオーウェンは・・・。
優柔不断のオーウェンが、ぶち壊し屋のレイとの友情に決別、一人で歩み始めるという辛口人生ドラマです。 ホントの思いを口にしたために崩壊するようなら、それはホントの友情なんかじゃないですよね？ ポール・ジアマッティの「サイドウェイ」の焼き直しのようで新鮮味はないし、キャストも地味、それでも、さらりとしたラストには残るものありでした。
銀行強盗で12年の刑に服していたジーノ（アラン・ドロン）が、老保護司ジェルマン（ジャン・ギャバン）の力添えで仮釈放。 妻やジェルマンの家族の励ましもあり、真面目に働きだしたジーノだが、昔の仲間たちにつきまとわれる中、ジーノを逮捕したゴワトロ警部の執拗な監視にあい、次第に歯車が狂いだすのだった。
犯罪ものを描いて第一人者ジョヴァンニ監督作品ですが、いかんせんテーマが重過ぎて爽快感ゼロなので、さしものジョヴァンニ・ファンであっても一押しとはいかず。
所詮、人間とは悪なのか？ 時には犯罪を犯してしまった者より、正しいとされる者にこそ悪が潜んでいる。
旅行記を書くためにアメリカを旅するドイツ人作家のフィリップが、思うように仕事がはかどらず、資金が尽きて帰国のために空港へ。 ひょんなことから、そこで出会った少女アリスを祖母の下へと送り届けるはめに。 祖母の家の写真だけを手がかりに、アムステルダム経由でドイツ、ルール地方へと二人の旅は続くのだった。
ロードムービー男ヴィム・ヴェンダースが、仕事に行き詰まり、自信喪失気味の作家と、したたかでタフな面を覗かせる少女との対称を描き出して見せるものあり。 アリスとの別れに安堵しながらも、どこか喪失感漂うフィリップに感じるものがあれば傑作扱いでしょう。
失恋の痛手から逃れるため入隊したものの、当然のように軍隊生活に馴染めず除隊したアントワーヌ・ドワネル（ジャン・ピエール・レオ）が、ホテルの夜警、私立探偵、修理工と仕事を転々としながら恋人クリスティーと婚約するまでを描いたコメディタッチの作品。
「大人は分かってくれない」の少年のその後を描いたとされるトリフォー作品ですが、アングル、色彩など映像的には完璧と言ってもいいくらいの素晴らしい世界が楽しめます。 もう、それだけでほとんど満足なんですが、93分とダラダラしてないのも好感。 肝心の内容はと言えば、流れのままに生きるドワネルが、出会う人達に振り回されながらも、それなりに幸せになる姿を大らかなユーモアの中に描いたもの。 ドジばかりのくせして、依頼主の美人妻に迫られたりして、個人的にはまったく共感できるもの無し！ なのに、許してしまう、そんな作品です。